シリコーン徹底解説

シリコーン製品 1

シリコーン製品 1

 

シリコーンはその多機能性と汎用性により、様々な業種で広く利用されています。以下に、いくつかのシリコーン製品を紹介します。

 

 

現在、モメンティブで取り扱っているシリコーンレジン製品です。

 

 

※以下文中には現在、廃番の製品も含まれます。代替品等に関しては、お気軽にお問い合わせください。どの製品が最適か、ご相談に応じます。

 


シリコーンレジン

シリコーンレジンの種類

シリコーンレジンは、分子中に3官能性あるいは4官能性シロキサン単位を多く持つシリコーンで、熱や触媒で硬化して、溶剤に不溶な硬い皮膜や成形品を形成します。優れた電気絶縁性と耐侯性を持つことから、電気機器の絶縁、耐熱塗料や耐候性塗料などに利用され、また優れた撥水性と離型性を持つことから、撥水剤や離型剤の原料として使われます。

純シリコーンレジン

2官能性と3官能性のシランを原料として作られるポリシロキサンのみからなるシリコーンレジンで(下図参照方)、通常50∼60%程度のキシレンやトルエンで希釈された製品です。

 

 

シリコーンレジン分子中にシラノール基などが存在するため、溶剤乾燥後200~250℃下、これら官能基を反応させることにより硬化します。有機酸金属塩やアミン類を触媒として加えることにより、低い温度で硬化させることもできます。

シリコーンレジン中間体

シリコーンレジン中間体は、水酸基やアルコキシ基をもった低分子量ポリシロキサンで、有機樹脂の変性用に開発されたレジンです。

 

シリコーン変性レジン

あらかじめシリコーンレジンとアルキッド樹脂、 ポリエステル樹脂、 アクリル樹脂またはエポキシ樹脂とを反応させたレジンです。

 

(1) シリコーンアルキドレジン

アルキッド樹脂に含まれる C-OH や COOH とシリコーンレジン中間体に含まれるシラノール基などを反応させ作られたレジンです。

 

アルキッド樹脂で変性することにより150℃程度の加熱温度で硬化でき、耐溶剤性、密着性も向上します。 また、特殊な官能基を持ったアルキッド樹脂で変性したレジンは、触媒として金属石けんを加えることにより常温で硬化するため、加熱できない屋外建造物保護のための塗料として使われます。

 

(2) シリコーンエポキシレジン

シリコーンレジン中間体とエポキシ樹脂とを反応させ作られたレジンで、耐酸性・耐熱性が要求される用途に使われます。

 

(3) シリコーンポリエステルレジン

シリコーンレジン中間体とポリエステル樹脂のアルコール性水酸基を反応させて作られたレジンで、硬化することにより折り曲げ抵抗力に優れた硬い塗膜となります。耐候性にも優れるため、屋外で使われる変圧器のコイルコートとしても使用可能です。

 

(4) その他のシリコーン変性レジン

アクリル樹脂、 フェノール樹脂、 ポリウタレン樹脂、メラミン樹脂などで変性した製品も用意しており、それぞれ目的に応じた塗膜特性を必要とする用途に使われます。例えば、アクリル樹脂で変性されたレジンは、アクリル樹脂の塗膜特性をさらに向上させ、耐溶剤性、耐薬品性、 耐候性に優れた強じんな塗膜を形成します。

 

無溶剤シリコーンレジン

トルエン、キシレン、アルコールなどの溶剤を含まない無溶剤タイプのシリコーンレジンです。溶剤を含まないため、省資源化や労働環境の改善に寄与します。

無溶剤シリコーンレジンとして ①常温で液状、 ②固形あるいは粉末状のレジンを用意しています。

 

シリコーンレジンの硬化方法

① 加熱によるSi-OHの脱水縮合、② 有機過酸化物によるラジカル反応、③ 白金触媒下でのSi-CH=CH2と Si-Hとの付加反応、および ④ 紫外線照射による硬化方法があります。例えば、剥離紙用コーティング剤は③、シリコーンハードコートでは①及び④の硬化方法が一般的です。

 

シリコーンレジンの性質

純シリコーンレジンの組成と物性との関係

2官能性と3官能性のシランを原料として作られるポリシロキサンのみからなるシリコーンレジンの物性は原料シランの選択、例えば、有機基の割合(R/Si)やフェニル基の含有率によって決定されます(図1参照方)。

 

図1 図1

耐熱性

シリコーンレジンは、硬化後180~200℃の温度下で連続使用できる耐熱性を持ち、 間けつ的には300℃の温度にも耐えることができます。そのデータを他のレジンと比較して図2(加熱減量)および図3(屈曲性、耐熱き裂性)に示します。

 

 

この様にシリコーンレジンは耐熱性に優れているため、アルキッド樹脂などにシリコーンレジンを配合することで、アルキッド樹脂の耐熱性が改善され、高温にさらされても高い光沢性を保持する塗膜を得ることを可能にします(図4参照方)。

 

 

電気特性

シリコーンレジンは電気絶縁性にも優れ、誘電率、誘電正接の温度および周波数依存性が小さく、また耐アーク性、 耐コロナ性にも優れます(図5~図8参照方)。

 

耐湿・耐水性

シリコーンレジンの硬化した塗膜は耐水性、 耐湿性にも優れます。ただし、基本的にはシロキサン骨格から成るため、湿気やガスの透過率が高く、電気絶縁に使用する場合には吸湿性の少ない材料と組み合わせることを勧めます。

 

耐薬品性

耐薬品性は必ずしも有機樹脂より優れているとはいえません。そのため、耐薬品性が要求される用途には有機樹脂で変性することを勧めます(表3参照方)。

 

耐候性

シリコーンレジンは優れた耐候性を持ちます。ただし、機械的強さ、素地への密着性の観点から、シリコーン変性レジンがより一般的に使われます(図10、図11参照方)。

 

難燃性

シリコーンレジンは、有機基含有量(R/Si)が少ないため、難燃性にも優れます。

これは有機基含有量(R/Si)が少ないことに起因し、一般的なプラスチックは酸素濃度が20~29%の範囲で燃えるものの、シリコーンレジンでは35%以上の酸素濃度を必要とします。

 

電気用シリコーンレジンの製品と応用

シリコーンレジンは、分子中に3官能性あるいは4官能性シロキサン単位を多く持つシリコーンで、熱や触媒で硬化して、溶剤に不溶な硬い皮膜や成形品を形成します。優れた電気絶縁性と耐侯性を持つことから、電気機器の絶縁、耐熱塗料や耐候性塗料などに利用され、また優れた撥水性と離型性を持つことから、撥水剤や離型剤の原料として使われます。

 

布管用シリコーンレジン

シリコーンレジンをガラスクロスやスリーブに塗布し、自動車のエンジンまわり、ガスコンロ、ガス釜、ガス湯わかし器など、耐熱性が要求される配線の絶縁材として使われます。

レジンとして、樹脂状硬化物になる製品からエラストマー状になる製品を用意しています(表6参照方)。

 

コイル含浸用シリコーンレジン

電気機器のコイルまたは組立て後に機器全体を含浸し、熱で硬化して絶縁膜を形成させるために使われるレジンです。

 

マイカ接着用シリコーンレジン

マイカ粉からマイカ板を製造するために使用されます。① 柔軟なマイカ板製造用レジン、② 硬いマイカ製品用レジン、③ 無煙マイカ板用レジンなどがあります。

 

積層板用シリコーンワニス

ガラス繊維、マイカなどの無機質材料と組み合わせて、 耐熱性および電気絶縁性に優れた積層板に用いるシリコーンレジンです。

 

塗料用シリコーンレジンの製品と応用

純シリコーンレジン

シロキサンのみから成るシリコーンレジンは耐熱性に優れ、プライマーと組合わせることにより、耐熱顔料や基材との密着が向上した塗料が得られます。また、アルミニウム粉やフリットと組合わせで、500℃から600℃まで耐えうる塗料を作ることが可能です(写真1参照方)。

 

写真1 アルミ塗料の耐熱性 (ガスバーナーで加熱) 写真1 アルミ塗料の耐熱性 (ガスバーナーで加熱)

塗料用シリコーン中間体

塗料用シリコーン中間体は、有機樹脂の変性材料として使用されます。シリコーン中間体の持つメトキシ基や水酸基などの官能基を利用して有機樹脂の変性を行います。

純シリコーンレジン

有機樹脂で変性されたシリコーンレジンとしては、シリコーンアルキッドとシリコーンポリエステルが一般的で、耐紫外線性、耐侯性の要求される塗料ビークルとして使われます。ポリエステルで変性されたレジンは、耐熱性、光沢性維持性に優れ、変色も少ない塗料のビークルとして使われます(表7参照方)。

 

シリコーンパウダー

シルセスキオキサン構造からなるシリコーンパウダー “トスパール” は、単分散状の粒子径を持った球状パウダーです(写真2参照方)。

トスパールは、①凝集しにくい、②撥水性が優れる、③潤滑性に優れる、④有機溶剤に不溶、⑤1900℃の高温下でも不溶融で、球状を保ったままセラミックスパウダーになる、⑨マイナス帯電量が大きい、などの特徴を持ちます。

これらの性質を利用して、塗料・インキ、合成樹脂、化粧品、製紙、顔料、セラミックス、グリース、トナーなどに添加し、改質することを可能にします。プラスチックスフィルムのブロッキング防止やスべリ性向上、化粧品では顔料の分散性向上、肌への延び改善、テカリを抑えソフトフォーカスにする、などの目的で使われます。

 

 

現在、モメンティブで取り扱っているシラン製品です。

 

 

※以下文中には現在、廃番の製品も含まれます。代替品等に関しては、お気軽にお問い合わせください。どの製品が最適か、ご相談に応じます。

 


シラン

有機ケイ素化合物は、①から⑤に示す性質に起因して特異的な反応性をもつことから様々な分野に使われています。

 

①   Si上の求核置換反応は、対応する炭素原子上の反応よりきわめて速い

 

②   Siは電気的に陰性な元素 (O、F) と強い結合を作る。

③  Si-C結合は、 Siに関して β位にある炭素陽イオンを安定化する

 

④   Siは隣接する炭素上の陰イオンを安定化する

 

⑤   C-H結合と異なり、Si-H結合は オレフィン、 アセチレン誘導体と反応して付加物を与える

また、Si-Si結合については次のような性質があります。

 

⑥ 二重、 三重結合といった多重結合をつくりにくい

 

⑥  結合エネルギーが小さく、 光によって分解されやすい

 

特異的な反応性を利用した有機ケイ素化合物の用途は次のようです。

 

(1) 有機化合物の修飾

(2) 無機化合物の表面改質

(3) 有機化合物と無機化合物の複合化

 

⑤に示す性質を利用してバラエティに富んだ有機ケイ素化合物を合成することができます。

 

R1CH=CH2+HSiR2R3R4 → R1CH2CH2SiR2R3R4

            触媒

 

以下に、代表的な有機ケイ素化合物の性質および用途について述べます。

 

クロロシラン

メチルクロロシラン

メチルクロロシランは、直接法により金属ケイ素と塩化メチルを銅または塩化第1銅を触媒として合成されます。

 

フェニルクロロシラン

フェニルクロロシランもメチルクロロシラン同様、金属ケイ素とクロロベンゼンから直接法によって合成されます。

 

クロロシランの応用例

メチルクロロシラン、フェニルクロロシランなどのクロロシランは、そのほとんどがシリコーン製品製造のための原料となります。 また、クロロシランのSi-C1結合はきわめて反応性に富むため、種々の反応に利用されます。

 

医薬品合成工程での活性水素保護

医薬品中間体に含まれる水酸基(-OH), アミノ基 (-NH), カルボキシル基(-COOH)などの活性水素を一旦シリル化(R3 Si-)して保護することにより 医薬品を効率よく製造するために使われ、市場が広がってます。

 

医薬の種類 反応基 シリル化剤
ペニシリン  -COOH,-NH2 Me3SiCl
セファロスポリン  -COOH,-NH2 Me3SiCl
プロスタグランジン -OH t-BuMe2SiCl

 

液体クロマトグラフィー用充填剤

液体クロマトグラフィー用カラムの充填剤処理に長鎖アルキル基をもつクロロシランが使われます。このようなクロロシランで処理された充填剤を使うことにより、医薬品、低分子量蛋白質、オリゴヌクレオチドなどの効率よく分析・分取できるカラムが作られます。

 

その他

クロロシランはその他の用途にも利用され、例えば メチルトリクロロシランはCV(Chemical Vapor Deposition) 法によるセラミックス製造の原料として、トリクロロシランは高純度シリコンウェーハをつくるためのポリシリコン製造の原料として使われます。

 

アルコキシシラン

アルコキシシランは、一般的にクロロシランをアルコールと反応させることにより合成され、R, Si (OR') -m で示される化学構造を持ちます。このアルコキシ基 OR' は水と接触し容易にシラノール基 (Si-OH) になります。生成したシラノール基は無機材料表面 (M-OH)との間でオキサン結合 (Si-O-M) を形成し、 無機材料と結合します。 R 基として疎水性を持つメチル基、 フェニル基、 オクタデシル基などがあり、無機材料表面の改質、 たとえば撥水性、離型性、分散性、分離性、耐擦傷性の向上および凝集防止などに幅広く利用されます。

代表的なアルコキシシラン

当社ではとくにエレクトロニクスグレードとして TSL8113E, TSL8112Eなどを製品化しています。電気伝導度, 金属分含有量, C1 分含有量をきわめて低レベルに管理したグレードで、イオン性不純物の存在が問題とされるような用途に最適です。

アルコキシシランの応用例

ハードコート剤

TSL8113と TSL8114を共加水分解することにより、または TSL8113の加水分解物とコロイダルシリカを組合わせることにより、ハードコート剤を製造することができます。ハードコート剤はプラスチックスなどの表面処理に使われ、耐擦傷性、耐湿性、耐薬品性、耐溶剤性などを向上させます。

 

液体クロマトグラフィーのカラム充填剤処理剤

オクタデシル基を有する TSL8185、TSL8186は、他のクロロシランと同様にシリカゲルなどの無機材料を効率よく疎水化処理でき、液体クロマトグラフィーやガスクロマトグラフィーのカラム充填剤の処理などに広く応用されます。

 

浸透性シラン系防水材

アルコキシシランは一般に、 コンクリートやモルタルなどの基材の毛細管空隙に深く浸透し、強力な防水層を形成して吸水、 凍害、 塩害、 紫外線などによる建造物の劣化を防止する働きがあります。当社では、このようなアルコキシシランの性質を積極的に利用した浸透型シラン系防水材 ″ トスバリア100″ を用意しています。

 

オレフィン重合触媒への応用

ポリプロピレンなどのポリオレフィン製造時、TSL8172、TSL8173などを触媒とともに加えることにより、分子量分布や結晶性などのポリマー性状の優れた重合体を得ることができます。さらに、ポリオレフィン製造の工程短縮にも寄与します。

 

シラザン

Si-N-Si結合をもつ有機ケイ素化合物で、一般的には対応するクロロシランとアンモニアとの反応で合成されます。シラザンは容易に加水分解やアルコリシスして、それぞれシラノール、アルコキシシランになります。そのため、シラザンはクロロシランやアルコキシシランと同様な用途に利用されます。

 

代表的なシラザン

下の表は代表的なシラザン化合物の物性です。

製品名 化学 学名 構造式 性状 沸点 ℃ 屈折率 比重
TSL8802 ヘキサメチルジシラザン MeзSiNHSiMe3 液体 126 127 1.408 0.774

 

シランカップリング剤

シランカップリング剤は、官能基を持った有機基と無機材料などと反応することができる加水分解性基を持った分子構造を持ちます。その結果、 図1に示すように有シラン有機機材料と無機材料との間に介在して、 両者を結合させる役割を果たすことができます。 この性質を利用して、有機・無機複合系からなる材料の改質 (機械的強度の向上、耐水性の向上および浸水後の電気特性の改善など) に幅広く利用されます。

 

図1:シランカップリング剤を介する有機材料と無機材料の結合 図1:シランカップリング剤を介する有機材料と無機材料の結合

代表的なシランカップリング剤

シランカップリング剤は、当初ガラス繊維強化プラスチック (FRP) に用いられているガラス繊維の処理剤として使用されました。 その後、 新しいシランカップリング剤が開発され、 現在ではレジンコンクリート、 シェルモールド、塗料、 プライマー、 接着剤など、 無機材料と有機材料からなる複合材料には、 ほとんどの場合使使用されます。 高度化しつつある市場からの要求に対応するため、無機材料と結合する置換基が2個のシランカップリング剤も製品化され、シランカップリング剤を配合した樹脂などの保存安定性を改善する目的と、無機材料との結合に柔軟性を持たせることを目的で使用されます。さらに、同一分子中に有機材料と結合する同種あるいは異種の官能基を複数個含むシランカップリング剤や、 無機材料と結合する加水分解性基の数を倍増させたシランカップリング剤も製品化しています。

 

シランカップリング剤の応用例

(1) エポキシ樹脂系

電気特性を改善する目的で、各種電気製品、 コンピューターなどに用いられるプリント基板用ガラスエポキシ積層板製造に使用します。

 

(2) 各種エラストマー

白色フィラーと呼ばれるシリカ、 炭酸カルシウムなどを配合したEPDM、 NBR、 イソプレンゴム製造に使われます。 シランカップリング剤をゴムに配合することにより、白色フィラーの分散性および補強性を改善します。

 

(3) プライマー

シランカップリング剤のもつ性質を最も積極的に利用した用途としてプライマーがあります。プライマーは、無機材料や金属への有機材料の接着、 有機材料どうしの接着のために使われます。

 

(4) シラン架橋ポリエチレン

ビニル基を持ったシランカップリング剤は、ポリエチレンへのグラフト重合され、加水分解性のあるアルコキシ基を持った架橋ポリエチレン製造に利用されます。得られた架橋ポリエチレンは、 成形後沸騰水に浸漬するなどの方法で架橋させることができ、ポリエチレンの物理特性を改善に役立っています。従来の架橋方法に比べ、少ない設備コストやエネルギー消費でポリエチレンの架橋が可能になりました。

 

反応性シロキサンオリゴマー

反応性シロキサンオリゴマーは、 有機ポリマーのシリコーンによる変性を目的に新しく開発された、反応性のあるジメチルシロキサン低重合体です。 末端部分に化学的に活性な有機官能基をもつことを特徴とし、図1に示すように、官能基の配置によって、 片末端タイプ、両末端タイプの2つがあります。

 

図1:反応性シロキサンオリゴマーの化学構造 図1:反応性シロキサンオリゴマーの化学構造

 

図2に示すように、 片末端タイプは有機ポリマーにシロキサン鎖をグラフト状に導入することができ、 両末端タイプはブロック状に組み込むことができます。官能基としてアミノ基、 メルカプト基、 メタクリル基、 エポキシ基などを容易しています。

 

図2:反応性シロキサンオリゴマーの化学構造 図2:反応性シロキサンオリゴマーの化学構造

 

反応性シロキサンオリゴマーは、有機変性シリコーンオイルに比べて低分子量であるため、 有機ポリマーや溶剤への相溶性が良く、また官能基の反応性にも優れます。しかも、末端部分のみに官能基をもつため、 反応が制御しやすく、 設計どおりの変性構造を得ることができます。シリコーンの持つ優れた耐熱性、耐摩耗性、柔軟性、 ガス透過性などの性質を持った有機ポリマー製造が可能になります。

 

 

現在、モメンティブで取り扱っているシリコーンオイル製品です。

 

 

※以下文中には現在、廃番の製品も含まれます。代替品等に関しては、お気軽にお問い合わせください。どの製品が最適か、ご相談に応じます。

 


シリコーンオイル

シリコーンオイルの種類

シリコーンオイルは、シリコーンの中でも最も汎用性の高い製品であり、その優れた性質を活用して、幅広い分野で工業材料として使われています。以下に、シリコーンオイルの性質と用途について解説いたします。

 

シリコーンオイルの分子構造 図1

 

シリコーンオイルは通常、図1のような直鎖状の分子構造からなり、ケイ素原子(Si)に結合する有機基(R,R1またはR2)の種類や、シロキサンの重合度(mおよびn)から、分類(あるいはグレード分け)されています。そして、シロキサン上の有機基の種類から、純シリコーンオイルと変性シリコーンオイルの二つに大別しています。

純シリコーンオイルとは、図1で有機基R1,R2としてメチル基、フェニル基および水素原子からなるものを指します。

R1, R2すべてメチル基のものが、ジメチルシリコーンオイルです。そのグレードは粘度によって分けられ、0.65cStから100万cStまで広範囲の粘度群からなる製品群を用意しています。

 

R1およびR2がフェニル基で置換されたものは、メチルフェニルシリコーンオイルと呼ばれ、フェニル基含有量の異なる製品群を用意しています。

R1がメチル基、R2が水素原子からなるものを、メチルハイドロジェンシリコーンオイル(H-オイルと略称されることもある)と呼びます。オイル中のSi-H結合は反応性に富み、活性水素を持つ水、アルコールや有機酸など、また不飽和結合を持つ有機化合物などと反応させることができます。

図1においてRが長鎖アルキル基、高級脂肪酸基、ポリオキシアルキレン基などの置換基を持つ製品を変性シリコーンオイルと言います。以下に代表的な変性シリコーンオイルについて述べます。

Rとして長鎖アルキル基またはアラルキル基を持つアルキル変性シリコーンオイルまたはアラルキル変性シリコーンオイルは、ジメチルシリコーンオイルより潤滑性の優れています。また、種々の有機物質との親和性に優れているため、ペインタブル性を持つシリコーンオイルとして知られています。

 

Rとして高級脂肪酸残基で変性されたシリコーンオイルは、アルキル変性シリコーンオイルと同様、潤滑性、溶解性に優れたオイルとなります。

Rとしてポリオキシアルキレン基を導入することにより界面特性を持ったシリコーンオイルが得られ、水溶性を持ったシリコーンオイルを得ることができます。これらはポリオキシアルキレン変性シリコーンオイルまたはシリコーンポリエーテル共重合体などと呼ばれ、その特異な界面特性を生かして、ウレタンフォーム製造時の整泡剤として使用されています。

これら以外にRとしてヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、エポキシ基含有有機基またはメルカプトアルキル基など、反応性を持った有機基を導入したシリコーンオイルも製品化されており、他の有機物質、樹脂あるいは繊維などに反応させ、シリコーンの特長(離型性や柔軟性など)をそれらに付加する目的で使用されます。

上記した変性シリコーンオイルに加え、使用目的に応じた変性シリコーンオイルが開発されています。

シリコーンオイルの種類

最も一般的なジメチルシリコーンオイルを中心に、シリコーンオイルの性質について以下に述べます。

 

1) 温度による粘度変化が少ない

 

2) 蒸気圧が低い

 

3) 引火点が高い

 

4) 流動点が低い

 

5) 温度による容積変化が大きい

 

6) 圧縮率が大きい

 

7) せん断抵抗性が大きい

 

8) 独特の潤滑性をもっている

 

9) 電気絶縁性に優れている

 

10) 表面張力が小さい

 

11) 撥水性がある

 

12) 離型性,非粘着性を付与する

 

13) 消泡性がある

 

14) 良好なつや出し性がある

 

15) 他の物質に溶解しにくい

 

16) 熱酸化安定性に優れる

 

17) 化学的安定性に優れる

 

18) 生理的に不活性である

 

表1にジメチルシリコーンオイルの代表的な特性値、表2には他の純シリコーンオイルの特性値を示します。

 

ジメチルシリコーンオイルの代表的な特性 表1
他の純シリコーンオイルの特性値 表2

物理特性

粘度

シリコーンオイルの粘度は、オイルに含まれる有機基の種類と割合、そしてシロキサンの重合度によって決まります。図2にジメチルシリコーンオイルの重合度(分子量)と粘度との関係を示します。

ジメチルシリコーンオイルは、粘度が異なったオイルどうしを均一に混合でき、混合することにより希望する粘度を持つオイルの調製が可能です。図3に目安となる混合チャートを示します。

シリコーンオイルで最も注目すべき性質の一つは、温度による粘度の変化が少ないことです。ジメチルシリコーンオイルの温度による粘度変化は、鉱物油、動植物油、ジエステル油などの合成油と比べて著しく小さく、その粘度温度係数(Viscosity Temperature Coefficient、VTC)は0.6前後であり、メチルフェニルシリコーンオイルや変性シリコーンオイルのVTCより更に低い値を持っています。

 

ジメチルシリコーンオイルの分子量と粘度との関係 図2
高粘度のオイルの重量比 図3
シリコーンオイルの低温特性 図4

 

凝固点(流動点)

ジメチルシリコーンオイルは、高粘度のもの(10,000cSt以上)を除いて、-50℃でも流動性を示します。少量のフェニル基を持ったメチルフェニルシリコーンオイルでは、-70℃の環境下でも流動性を保ちます。図4にフェニル基含有量が凝固点温度にどのように関係するかを示します。

 

 

比重 (容積) 変化

ジメチルシリコーンオイルの体膨張率は水や鉱物油などに比べて大きいため、温度の変化によって比重や容積が大きく変わります。鉱物油と比較してもこの変化は大きいため、シリコーンオイルをトランス封入油などに使用する際には、容積変化を考慮した設計が必要です。

 

比熱・熱伝導率

ジメチルシリコーンオイルの比熱は、粘度や温度によって若干の違いがありますが、25℃での値は約 0.35cal/・g℃で、これは水の約 1/3 に相当します。有機油の中では、比熱が非常に小さい部類に入ります。また、熱伝導率については、鉱物油と比較してやや高く、25℃で約 3.8×10-4 cal/s・cm・℃ 程度であり、水の約 1/4 です。粘度が増加するにつれて熱伝導率も上昇しますが、100cSt以上の粘度を持つものでは、熱伝導率はほぼ一定となります。

 

 蒸気圧

ジメチルシリコーンオイルの蒸気圧は、低粘度の製品を除き、非常に低いとされています。特に、1,000cSt以上の製品においては、蒸気圧は粘度の影響をほとんど受けず、ほぼ一定となります。

 

圧縮性

ジメチルシリコーンオイルは、一般的な有機油と比較して非常に高い圧縮率が大きく、圧力により容積が減少し粘度が急激に増加する特性を持っています(図5、図6参照方)。

この性質を利用して、ショックアブソーバーやダンパー油などに利用されます。

 

シリコーンオイルの圧力による容積減少率 図5
ジメチルシリコーンオイルの圧縮による粘度変化 図6

 

せん断に対する抵抗

加圧下で鉱物油や合成油などの作動油滑油を狭い隙間を通すと、せん断力によって分子が破壊され、その粘度が永久的に低下します。しかし、ジメチルシリコーンオイルはせん断による分子破壊の影響を受けにくく、見かけの粘度は低下するものの、永久的な粘度低下の少ないオイルです。

ジメチルシリコーンオイルを潤滑油として使用する場合、鋼境界に対する潤滑性は他の鉱油に比べて劣るため、油性向上剤や極圧添加剤などを組合わせる必要があります。ただし、アルミニウムや青銅の組み合わせ、木材同士、または様々なプラスチックの組み合わせや、負荷がそれほど大きくない軽潤滑条件下では、優れた潤滑油として機能します。

境界潤滑性を改善したシリコーンオイルとして、フルオロアルキル変性シリコーンオイル(フロロシリコーンオイル)、高級脂肪酸や高級アルキル基で変性したシリコーンオイルなどを用意しているため、潤滑目的に合せてシリコーンオイルの選択を行ってください。

 

表面張力

シリコーンオイルは、一般的な有機油や溶剤と比較して非常に低い表面張力を持っており、ジメチルシリコーンオイルでは21.2 dyn/cm以下と非常に低い表面張力です(図7参照方)。メチルフェニルシリコーンオイルやその他の変性シリコーンオイルでも、他の有機油に比べて小さい表面張力を持ちます。

シリコーンオイルの低い表面張力を活用する例として、ウレタンフォーム整泡剤として使われるシリコーンポリエーテル共重合体があります。これを添加することにより、ウレタンフォーム製造過程で原料成分の表面張力を下げ、泡を安定化させることができます。また、ジメチルシリコーンオイルは、その低い表面張力が消泡剤、離型剤、撥水剤などの用途に有利です。しかし、潤滑油や電気絶縁油として使用する場合は、広がりやすい性質(這いあがり現象)があるため、注意が必要です。

 

シリコーンオイルの粘度と表面張力との関係 図7

 

吸湿性

ジメチルシリコーンオイルは水に不溶です。しかし、吸湿性があり、50cStのオイルの場合、常温で約200ppm程度吸湿します。図8に相対湿度とジメチルシリコーンオイルの飽和吸水量との関係を示します。

このように吸湿性があるため、電気絶縁油として使用する際にはあらかじめ減圧下で加熱乾燥するなどの前処理が必要です。

 

シリコーンオイルと鉱物用の飽和状態 図8

 

離型性

シリコーンオイルは、表面張力が小さく、広がりやすい性質を持っています。そのため、型のあらゆる部分に均等に行きわたり、薄い油膜を形成します。さらに、多くの物質に対して親和性や溶解性が低いため、優れた離型性を示します。耐熱性にも優れるため、高温下でも型汚れを起こさず、長期間使用できる特長があります。そのため、ゴム、プラスチック、金属などの離型剤として広く利用されています。

 

消泡性

シリコーンオイルは、表面張力が低く、さまざまな物質との溶解性が小さいため、消泡剤として優れています。特に、シリコーンオイルは微量でも優れた消泡性を示す特長があります。

 

化学特性

ジメチルシリコーンオイルとメチルフェニルシリコーンオイルを中心に、その化学特性について以下に説明いたします。

 

ジメチルシリコーンオイルは、空気中での酸化に対して非常に安定であり、150℃以下では酸化がほどんど進行しません。180℃を超えると酸化が進行し、メチル基の酸化によるホルムアルデヒドやギ酸が発生します。同時に粘度上昇が起こり、長時間後ゲル化することがあります。実験室的には、200℃で約200時間、250℃で20〜50時間程度でゲル化することが確認されています。

メチルフェニルシリコーンオイルはジメチルシリコーンオイルよりも耐熱性に優れ、フェニル基含有量30モル%以上のオイルでは、300℃という高温下でも数百時間使用することができます。

そのようなシリコーンオイルでも、酸素のない高温(220℃以上)条件下では、主鎖であるシロキサン結合の切断(解重合)が起こり、低分子シロキサンの生成して粘度が低下することが観察されます。図9にジメチルシリコーンオイルの例を示します。

 

 

ジメチルシリコーンオイルの密閉下加熱時の粘度変化 図9

 

化学特性

ジメチルシリコーンオイルは、常温下濃度10%以下のアルカリ水溶液および30%以下の酸に接触しても、ほとんど影響を受けません。しかし、高温下では少量の酸またはアルカリとの接触でも、分解、増粘、ゲル化が進行します。また、アルミニウム、銅、ニッケル、ステンレスなどの金属との接触ではほとんど影響を受けないものの、鉛、セレン、テルルなどの金属との接触では高温にてゲル化するため、取扱いに注意が必要です。たとえば、ハンダと接触するような用途への使用は避けることを勧めます。

腐食性(他材料へのシリコーンオイルの影響)

ジメチルシリコーンオイルとメチルフェニルシリコーンオイルは通常の条件下では化学的に不活性であり、金属を腐食させることはありません。ゴムやプラスチックに対しても不活性ですが、ゴムに含まれている可塑剤をシリコーンオイルが抽出してしまうことがあるため、注意が必要です。

 

溶解性

ジメチルシリコーンオイルは、無極性溶剤には溶解しますが、極性溶剤には難溶です。また、粘度によっても溶解性は異なり、低粘度のものほど溶解しやすい傾向があります。メチルフェニルシリコーンオイルはジメチルシリコーンオイルよりも広範囲の溶剤に溶けやすく、シリコーンポリエーテル共重合体ではエタノールや水にさえ溶解することがあります。

ガス溶解性については、ジメチルシリコーンオイルは酸素、窒素、炭酸ガスなどの気体を鉱物油よりも多く溶解します。

 

電気特性

ジメチルシリコーンオイルは温度や周波数による電気特性の変化が少なく、かつ燃焼性が小さいため、優れた絶縁油として知られています。絶縁破壊の強さは鉱物油系の最良の絶縁油よりも優れており、35~40 kV(電極の直径25.4mm、2.5mm間隙)程度で安定した性能を持っています。ジメチルシリコーンオイルの電気特性を鉱物油と比較したデータを表3に示します。

ジメチルシリコーンオイルと鉱物油系絶縁油の電気特性 表3

 

ジメチルシリコーンオイルの絶縁油としての利点を挙げると、次のようになります。

 

  1. 1.鉱物油系の絶縁油に比べて、温度による粘度の変化や高温における絶縁性能の変化が少ない。
  2. 2.低温でも流動性を持ち、熱放散性に優れる。
  3. 3.表面張力が低いため濡れやすく、部品内部に浸透しやすい。
  4. 4.耐コロナ性に優れる。

 

しかし、ジメチルシリコーンオイルは、他の絶縁油より吸湿性が大きいため、使用する前に十分に乾燥し、絶縁材料からの水分や電気機器の気密など、水分管理に注意する必要があります。

 

耐熱放射線

シリコーンオイルにy線などの放射線が照射されると、分子間で架橋が起こり、粘度が上昇し、最終的にはゲル化します。ジメチルシリコーンオイルの耐放射線性は、一般的な有機油とほぼ同等ですが、フェニル基の含有量の大きいメチルフェニルシリコーンオイルは耐放射線性にも優れています。

 

安全性

さい油として知られています。

 

生理活性

シリコーンオイルは生理学的に不活性なオイルです。特にジメチルシリコーンオイルの場合、LD50値が50ml/kg以上であり、生態に対して非常に安全性の高い材料です(表4参照方)。

 

ジメチルシリコーンオイルの毒性 表4

シリコーンオイルの応用

シリコーンオイルは多くの優れた性質を持つことから、その応用分野は非常に広範です。以下に代表的な用途を示します。

 

絶縁油

ジメチルシリコーンオイルの安定した電気特性、耐熱性、耐寒性などを活用して、車両用トランスやコンデンサーの絶縁油、OF(Oil Filled)ケーブルの絶縁油、トランジスターなどの電子部品の封入絶縁油。

 

液体カップリング

ジメチルシリコーンオイルの耐熱性、耐寒性、機械的なせん断安定性、および粘度の温度依存性の小さな特性を活用して、液体継手のカップリングオイル(ファンカップリングオイルなど)。

 

緩衝油

ジメチルシリコーンオイルの大きな圧縮率と緩衝作用を利用して、サーキットブレーカーやディーゼルエンジン、ドアチェッカー、電子機器、プレーヤーアーム、車両および航空機計器などのダンパー油。

 

潤滑油

カメラなどの光学機械、ミシン、編機などの精密機械の潤滑油、焼結合金やプラスチック製の無給油軸受などの含浸油。

 

熱媒

化学プラントや化学実験室などで、高温および低温下で使用する熱媒。

 

撥水剤および表面処理剤

消火器用粉末や化粧品用粉体の撥水処理、金属、ガラス、陶磁器、カーボン抵抗器などの表面処理。

 

 離型剤および内部添加剤

ゴム・プラスチック成形時の離型やシェルモールドの鋳型の製造、鋳物などの鋳造時の離型。また、複写機紙送りロールの離型など。

 

消泡剤

エンジンオイルやモーターオイルなどの潤滑油や切削用の発泡防止剤。また、石油精製時や蒸留工程時の消泡剤。

 

ワックス用

自動車用ワックス、ガラス磨き、靴クリームなど。

 

医療および化粧品

皮膚保護クリームや薬用軟膏の基油または添加剤、クリーム、ローション、口紅、リンス、ヘアケア商品の添加剤。

 

プラスチック添加剤

メチルハイドロジェンシリコーンオイル : ポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂の重合助触媒。ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなど : プラスチック成形時の成形性向上や、自己潤滑性の熱可塑性樹脂(ILTP)の内部添加用。

 

塗料添加剤

低粘度ジメチルシリコーンオイル : 塗料やインキに微量添加することで塗の伸びを向上させ、顔料の浮きやゆず肌を防ぎ、塗膜の仕上りや光沢を改善。アミノ変性シリコーンオイル : 合板用塗料の塗膜プロッキングを防止。

 

ウレタンフォーム整泡剤

主に界面活性を持ったポリエーテル変性シリコーンオイルが使われる。軟質フォームおよび半硬質フォーム、断熱材として用いられる硬質フォームのいずれの場合にも使用され、ウレタンフォーム製造には欠かせない材料。

 

 

 

現在、モメンティブで取り扱っているシリコーンオイル応用製品です。

 

 

※以下文中には現在、廃番の製品も含まれます。代替品等に関しては、お気軽にお問い合わせください。

どの製品が最適か、ご相談に応じます。

 


シリコーンオイル応用製品

離型シリコーン

ゴムやプラスチックなどの成形加工時、材料が金型などに接着または粘着するのを防ぐために、離型シリコーンが使われます。成形品の取り出しを容易にするだけでなく、成形品の表面美観も改善する効果があります。

 

離型シリコーンの特徴

1.表面張力が小さいため均一に広がりやすく、方の細部まで薄い皮膜を作る。

2.有機材料との親和性が小さいため、持続性のある離型性を持つ。

3.耐熱性に優れ、化学的に不活性であるため、金型および成形品を汚さない。

4.生理活性が低く、安全である。

 

これらの理由から、離型シリコーンはゴム、プラスチック、精密鋳造、陶器、繊維、紙、食品など、さまざまな用途での優れた離型剤として広く使用されています。

また、離型シリコーンは潤滑剤、柔軟剤、つや出し剤としても使うことができます。

 

離型シリコーンの種類

さまざまな用途に対応するため、オイル型、溶剤型、エマルジョン型、オイルコンパウンド型などの離型シリコーンがあります。


  1. 1.オイル型
      1. o   溶剤や水の使用ができない用途で、プラスチックスなどの材料に直接塗布することにより使用 
      2. o   通常は100~1,000cSt程度のジメチルシリコーンオイルが使用されるが、離型の持続性を必要とする場合は1    万~10万cSt程度の高粘度オイルが使われる。また、成形品を塗装するような用途には、ペインタブル性を持ったアルキル変性シリコーンオイルが用いられる。
      •  
  2. 2.溶液型
    • o   水が使用できない場合や離型剤使用による金型の温度低下を嫌う場合に使用。
    • o   シェルモールド、ダイカスト、ゴム、繊維などの離型、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂の離型。
    • o   使用条件に応じて適切なオイルと希釈溶剤の異なる離型シリコーンの選択が必要。
    •  
  3. 3.エマルジョン型
    • o   火災や衛生上安全な離型シリコーン。
    • o   水が乾燥しにくいような離型用途には不向き。
    • o   シリコーンの特性を生かし、繊維の滑剤、ゴム製品の艶出しなどとしても利用可能。
    •  
  4. 4.オイルコンパウンド型
    • o   シリコーンオイルに微粉末シリカを配合したペースト状の離型剤。
    • o   高温高圧下での離型、離型剤の流れや垂れを嫌う用途での離型に最適。
    • o   大型のプラスチックス成形時の離型、合成繊維の溶融紡糸ノズルの離型などが主な用途。

 

エアゾル型

スプレー缶入りなので、吹き付け塗布が容易。PE、PP、ABS、PSなどの熱可塑性樹脂成形時の離型や、ナイロン、ポリエステルなどの合成繊維の溶融紡糸ノズルへの付着防止などに用いられる。また、ドアやレールへの滑剤、縫製糸の滑剤などしても使用されます。

 

焼き付け型離型シリコーン

加熱などによりシリコーンを架橋させ、その硬化皮膜を離型目的で使うのが焼き付け型離型シリコーンです。

 

レジン型

加熱硬化可能なシリコーンレジンを使った離型シリコーンで、長期間の離型効果を必要とする用途や、パン、ビスケットなどの食品加工時の離型用途に使用します。シリコーンレジンが構成成分であることから成形物への移行がなく、塗装や接着を必要とする成形品の離型にも最適です。使用する際には、金型に塗布後150~200℃程度の温度で数時間加熱し、焼付けをします。硬化触媒を併用することにより、常温~100℃程度の温度で焼付けすることもできます。

 

ゴム型

硬化後、皮膜がゴム状弾性体となるシリコーン離型剤で、長期間の離型効果を希望する用途や、シリコーン皮膜に柔軟性が要求される用途に用いられます。具体例として、紙・繊維・ゴム・プラスチックフィルムなどの表面に離型性を持たせるためにコーティングされる剥離紙用シリコーンがあります。

 

離型シリコーン使用上の注意点

離型シリコーンを使用する場合、次のようなことに注意する必要があります。

 

  1.  
  2. 1.   食品包装容器やフィルムなどへの使用にあたっては、ポリオレフィン等衛生協議会または塩ビ食品衛生協議会のポジティブリストに適合する品種を選定する。
  3. 2.   溶剤またはエアゾル型の離型シリコーンを使用する際は、火気に十分注意し、作業場所の換気も十分に行う。
  4. 3.   触媒開封後は、湿気が入らないよう容器を密栓する。
  5. 4.   低温または高温下長期間保存すると、エマルジョン型シリコーンは分離することがある。
  6. 5.   メッキや塗装の後工程がある場合は、ペインタブル性のある離型剤を選択する。
  7.  

 

離型シリコーンの選択基準

使用条件に対する離型用シリコーンの選択基準を表1に示します。

 

離型用シリコーンの選択基準 表1

撥水シリコーン

  1. シリコーンが撥水剤として優れている性質を次に示します。

     

  2. 1)水に対する接触角が大きく、撥水性が優れている。
  3. 2)表面張力が小さいため濡れやすく、基材上に均一な皮膜を形成できる。
  4. 3)通気性がある。
  5. 4)耐久性が良く、耐洗濯性、耐ドライクリーニング性に優れる。
  6.  
  7. 応用される基材は、繊維、ガラス、ガラス繊維、セラミックス、建材、粉体など広い範囲にわたります。

 

撥水シリコーンの種類

撥水剤として用いられるシリコーンの形態には、離型シリコーンと同様にオイル型、エマルジョン型、溶液型などがあります。また、溶液型にはオイルおよびレジンをベースとするものがあり、用途、目的により適当なものを選ぶことができます。

 

オイル型

メチルハイドロジェンシリコーンオイルかジメチルシリコーンオイルのいずれかが使われ、撥水性を発揮させるため、基材上で加熱による焼付けを行います。ジメチルシリコーンオイルでは、200~300℃と高温に加熱することにより、メチルハイドロジェンシリコーンオイルでは150℃程度の加熱で撥水皮膜の形成が可能です。また、各種金属の有機酸塩を触媒として併用することにより、撥水皮膜形成を促進させることができます。

基材を撥水処理するために一般的に行われている方法としては、シリコーン分1~3%程度になるよう工業用ガソリンなどの溶剤で希釈し、触媒を加え、浸漬やスプレーなどする方法が取られます。

 

エマルジョン型

シリコーン分30~60%程度のエマルジョンであり、分散媒が水のため引火性がなく、安全衛生上の問題がないこと、他の樹脂加工剤と併用できることなどの利点があります。このタイプは繊維用撥水剤に用いられることが多く、通常100~150℃程度の加熱温度によって処理されます。

 

溶液型

シリコーンオイルまたはレジンをあらかじめ溶剤で希釈したもので、レジンに触媒などを添加し常温硬化を可能にした撥水剤も用意しており、繊維、ガラスやコンクリート、石材、レンガなどの建築材料用の撥水剤として使用されています。建築材料用撥水剤としては、特殊シランやメチルシリコーンレジンを基材とした溶液型撥水剤、ナトリウムまたはカリウムメチルシリコネートの水溶液の撥水剤も用意しています。

 

撥水シリコーンの応用

 

(1) 繊維への応用

縄、毛糸などの天然繊維や、ナイロン、ポリエステル、アクリルなどの合成繊維の撥水に使われます。シリコーンで撥水処理することにより、繊維の柔軟性も改善されしわになりにくくなります。また、繊維の引裂強度や摩耗強度などの機械的強度が改善され、縫製性が向上するという効果もあります。

シリコーンオイルとしては、通常、メチルハイドロジェンシリコーンオイルまたはそれとジメチルシリコーンオイルとを混合したものが用いられます。メチルハイドロジェンシリコーンオイルが多いほど焼付け温度が低くなり、撥水性も向上しますが、加工した繊維の触感はやや硬くなります。一方、ジメチルシリコーンオイルが多くなるにしたがい、織物の触感が柔らかくなり、縫製性も向上しますが、撥水性は低下します。

シリコーンによる繊維処理においては、従来からある撥水処理のみならず、防炎性の付与やオイルタッチコーティングなどといったいろいろな特性を付け加える加工・クロスコーティングも開発されています。

 

(2) ガラス・セラミックス

湿気による表面漏洩電流の防止や電気絶縁性の保持のため、ガラスやセラミックス製の電気部品材料をジメチルシリコーンオイルで表面処理します。また、注射液などの薬液をガラス壁に残すことなく取り出せるよう、ガラス製容器の内面に撥水皮膜を作るのにジメチルシリコーンオイルが使われます。

 

(3)建築

コンクリート、レンガ、石材などの建築材料、構造物の撥水処理にシリコーンが使用されます。コンクリートをシリコーンで処理すると、通気性のある撥水皮膜がコンクリート表面に形成されるため、雨に濡れても濡れ色を示さず、白華現象をも防止することができます。また、内部への水の浸透を防ぐことから、凍結によるモルタルの損傷を低減することができます。

これらの用途には、透性の良い特殊シランを用いた溶液型シリコーンや乾燥性の良いメチルシリコーンレジンから成るシリコーンが使われます。瓦や石膏ボードなどの撥水には、ナトリウムメチルシリコネートを主成分とした水溶性シリコーンが使われます。

 

(4) 粉体

ABC 消火器(粉末消火器)に使用される重炭酸ソーダ、第一リン酸アンモニウムなどの粉末処理のため、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが使われます。これらを処理することにより、保存中に起こる吸湿による粉末の凝結防止し、ノズルからの吐噴性を改善します。農薬の担体として用いられるクレーやタルクなどの撥水処理にシリコーンが使われ、保存中の凝結を防止や散布時の吐噴性改善に役立っています。

 

消泡シリコーン

いろいろな工業において泡立ち(発泡)のために作業能率や収率が低下したり、品質が低下するケースは多く、そのため泡立ちを減らす、あるいは泡を消すことが必要不可欠です。その目的で使われるのが消泡シリコーンです。

一般に、泡とは液体または固体が気体を包みこんでいる状態のものを言い、その泡を消すための方法として、次のような方法が知られています。

 

 

1)物理的・機械的方法 温度、圧力を変化させる、攪拌、遠心力、超音波などの機械的な外力を加えるなどの方法。

2)化学的方法 ろ過、吸着、沈澱などにより起泡性物質を除去する、希釈により起泡性物質の濃度を下げる、起泡性物質を溶解またはこれと反応する物質を添加する、消泡性のある物質を添加するなどの方法。

 

これらのうち、消泡剤の添加による消泡手段は、作業能率が良く、経済的にも有利で、実用上きわめて有効な方法です。

消泡剤を添加した場合の消泡メカニズムとしては、表面張力が小さい消泡剤が泡膜に入り込み、局部的に泡膜の表面張力を低下させ、その部分が周囲の表面張力の大きい泡膜によって強く引かれて、泡の破壊が起こると考えられています。一方、抑泡メカニズムは、液に不溶でかつ表面張力の小さい抑泡剤が、発泡液表面に点在することにより、系の表面張力が不均一になり泡が形成できないためと考えられています。

一般に、シリコーンオイルは抑泡性(持続性)に優れますが、分散性に乏しいため破泡性(速効性)に乏しいというきらいがあります。この点を補う消泡剤として、エマルジョン型や溶液型の消泡シリコーンがあります。ここで消泡剤として必要な特性をまとめてみると次のようになります。

 

1)表面張力が小さいです。

2)発泡液への溶解性は小さいが、発泡物質に対してある程度の親和性を有する。

3)分散性に優れる。

 

またシリコーンが消泡剤として優れている点としては次のようなことが挙げられます。

 

  1. 1. 化学的に安定で、発泡物質と反応しない。
  2. 2. 耐熱性に優れ、不揮発性である。
  3. 3. 生理活性がなく、一部の製品(ジメチルシリコーン)は食品添加物としても認可されている。また排水処理用としても環境汚染のリスクが少ない。
  4. 4. 微量の添加で高い消泡効果が期待できる。
  1.  

消泡シリコーンの種類

消泡シリコーンには、オイル型、溶液型、エマルジョン型、オイルコパウンド型などがあり、発泡液の種類や条件に応じて、その形態を選択することができます。

 

(1) オイル型消泡剤

100%オイル分であり、耐熱性に優れています。油性系で水や溶剤などの異物混入を嫌う場合に使用されます。発泡液が強酸または強アルカリで高温の場合には、変性シリコーンオイルが使用されます。

 

(2) 溶液型消泡剤

オイル型と同様、油性系の消泡に用いられるもので、使用の際の作業性および分散性を向上させるため、あらかじめ溶剤で希釈したものです。

 

(3) エマルジョン型消泡剤

シリコーンオイルを乳化剤を用いて乳化したもので、水系発泡液の消泡剤として用いられます。食品添加用、排水処理用などいろいろな用途に適するエマルジョン型消泡剤があります。

 

(4) オイルコンパウンド型消泡剤

より少量で消泡効果を発揮させるため、微粉末シリカをフィラーとして配合したものです。オイル型と同様、非水系で多く用いられます。

 

消泡シリコーンの応用

消泡シリコーンが用いられる分野について次に簡単に紹介します。

 

(1) 食品工業

食品の製造工程中に発生する泡を消す目的で用いられ、品質や収率の向上に役立ちます。応用例としては① 機械豆腐、包装豆腐の豆汁の煮沸工程、豆乳の充填工程、大豆油の搾油工程、大豆蛋白の製造工程など、②しょう油、発酵乳製品、グルタミン酸ソーダなど発酵工業における製造工程、③ジュース、コーヒーなどの機械による自動充填などが挙げられます。

消泡剤として、食品衛生法の基準に適合した消泡シリコーンの選択が必要で、その添加量も、食品 1kgに対しジメチルシリコーンオイルまたはシリコーン樹脂(食品衛生法に基づくシリコーンオイルとシリカの混合物の呼称)として0.05g以下と規定されています。また、消泡以外の目的で食品に添加してはならないとされています。

 

(2) 医薬品工業、化粧品工業

生理活性がないので、医薬品や化粧品の消泡に用いられます。

 

(3) 繊維工業

染色、精練、仕上げなどの工程における発泡防止に用いられるほか、加工用樹脂やラテックスに配合されて使用されます。また、染色工場の排水処理設備でも用いられます。

 

(4) 石油化学工業

石油精製、ペトロコークス製造工程、潤滑油や作動油などの製造工程、石油精製の脱硫工程での発砲防止に用いられます。また化学工業では、合成樹脂、ラテックスなどの重合、蒸留、洗浄の際の発泡に対して効果があり、装置の効率化、品質向上に役立っています。

 

(5) インキ塗料工業

塗装時のピンホール、印刷むらなどの原因となる泡に対して有効で、インキ、接着剤、塗料などの製造、配合の際に用いられます。

 

(6) パルプ製紙工業

パルプ加工工程、廃液工程、製紙工程などにおける発泡の抑制に用いられます。

 

(7) 排水処理

生活排水や工場排水などの処理施設で発生する泡の消泡に用いられます。シリコーン消泡剤は、微量の添加で良好な消泡性を示すので、BOD、CODの数値に大きく影響しない利点があります。

 

消泡シリコーン使用の際の注意点

(1) 希釈

消泡シリコーンは、通常微量の添加量(1~100ppm)で優れた消泡効果を示すため、水や溶剤で希釈して使用します。希釈することにより、添加量の調整が容易になり、分散効果も向上します。

 

(2) 添加量

添加量の決定は、まず有効成分で50ppm程度の消泡剤を加え、その消泡効果をみて増減する方法を勧めます。

 

(3)消泡シリコーンの選択

酸性、アルカリ性の強い高温発泡液には変性シリコーンオイルを基油とした消泡剤が適するなど、 発泡液の種類により、用いる消泡剤のタイプを選択することが必要です。

 

その他の応用製品

シリコーンオイルの応用のひとつにつや出し剤があります。これはシリコーンオイルの表面張力が低いこと、ぬれやすく、広がりやすいこと、潤滑性があるため塗布時の作業性を向上させることなどの特長を利用したものです。形態としては、エマルジョン型、溶液型、ペースト(ワックス)型など各種のものがあり、自動車ワックスや家具雑貨のつや出しに広く使用されています。

その他、シリコーンオイルの応用例としては、潤滑性をもった皮膜形成型シリコーンを注射針に処理して、刺通特性を改善する例や、織物にファッション性、防災性を与えるクロスコーティングの例などが挙げられます。

現在、モメンティブで取り扱っているシリコーンオイル応用製品です。