シリコーン徹底解説
シリコーン製品 2
シリコーンはその多機能性と汎用性により、様々な業種で広く利用されています。以下に、いくつかのシリコーン製品を紹介します。
現在、モメンティブで取り扱っているシリコーングリース・シリコーンオイルコンパウンド製品です。
シリコーングリースとシリコーンオイルコンパウンドは、図1に示すような増ちょう剤、基油、および添加剤から成り立っており、これらの組み合わせによって種類と性能が決まります。増ちょう剤として金属石鹸系を用い、主に潤滑を目的として使用されるものをグリースと呼び、非石鹸系(金属石鹸以外)の増ちょう剤を用いたものをオイルコンパウンドと呼び、潤滑性を必要としない電気・電子機器などの電気絶縁・防水シールなどに使用します。
ただし、グリースとオイルコンパウンドの明確な区別はなく、電気接点の潤滑に用いられる製品や電子機器の放熱に使われる製品などは、それぞれ接点用グリース、放熱用グリースと呼ばれることもあります。
基油による分類
基油となるシリコーンオイルとしては、ジメチルオイル、メチルフェニルオイル、アルキル変性オイル、フロロオイルがあります。
ジメチルオイルとしては、粘度の低い(100cSt以下)ものは離油度が大きく、粘度の高い(10万cSt以上)ものは粘着性が出るなどの欠点があるため、数cStから数十万cStの粘度範囲のものを一般的に使用します。
メチルフェニルオイルは、フェニル基の含有量によって低温用と高温用に使い分け、低温用のシリコングリース・オイルコンパウンドには、フェニル基の少ないオイルを、高温用には、フェニル基含有量が中程度のオイルを基油として使用します。
アルキル変性オイルは、シリコーンオイルの欠点である極圧潤滑性を改善するために、また、アルキル変性オイルはシリコーンゴムとの相溶性が悪く、シリコーンゴムを膨潤させないため、その性質を利用した製品の基油として使います。
フロロオイルは、シリコーン本来の特性に加え、潤滑性および耐薬品性を求める製品の基油として使います。
潤滑用シリコーングリースの性質
シリコーングリースに使われる増ちょう剤としては、良好な耐水性と高い融点を持ち、広い温度範囲で使用できるリチウム石けんを金属石けんとして一般的に使用します。また、基油としては前節に述べた各種のシリコーンオイルが使われます。
シリコーングリースは次のような特徴を持っています。
1)滴点(グリースの最高使用温度)が高い:シリコーングリースの滴点は一部の例外を除いて200℃以上で、石油系グリースに比べて著しく高い。
2)離油度と加熱減量が小さい:グリースの耐熱性、安定性を判断する上で重要な特性。シリコーングリースは石油系グリース、エステル系グリースなどに比べて、いずれも小さい値を示し、使用温度が高くなるほど、その差が拡大するため、耐熱性に優れる。
3)酸化安定性が優れている:シリコーングリースの酸化安定性は、石油系より著しく優れる(JIS K 2220に準じた酸化安定度試験の測定結果を図2に示す)。
4)低温特性に優れる:低温特性は基油の種類によって左右されるが、フェニル基の少ないメチルフェニルシリコーンオイルを用いたシリコーングリースでは、低温における始動トルクが小さい(図3にJIS K 2220に準じて低温トルクを測定した結果を示す)。
5) 耐水性が優れている:水中で数ヵ月放置してもほとんど変化せず、石油系グリースに比べて耐水性に優れる。
6)適用範囲が広い:シリコーングリースは化学的に不活性なため、プラスチックをはじめ各種材料に接触しても影響が少なく、広い範囲で使用可能。
7)極圧潤滑性に劣る: シリコーンオイルと同様に、一般にシリコーングリースの境界潤滑性は石油系グリースに比べて劣る。そのため、極圧条件下でシリコーングリースを使用する場合は、使用条件について事前に十分に検討することが必要(図4に、高速四球摩擦試験機で測定した鋼/鋼におけるシリコーングリースと石油系グリースの極圧潤滑性を示す。なお、シリカ増ちょうのシリコーングリースは、この方法では荷重10kgfで焼付いてしまい、摩耗痕の測定すら不可能)。
非石けん系シリコーングリースとは、シリカ粉、カーボンブラック、またはテフロン粉などを増ちょう剤とし、潤滑を目的とした製品のことです。増ちょう剤として金属石けんを使っていないため滴点がなく、200℃以上の高温下でも使用できる製品も実現可能です。特に、カーボンブラックやテフロン粉を増ちょう剤と使用すると優れ、約250℃の高温下でも使用可能になります。シリカ粉増ちょうの場合、極圧潤滑性に乏しいものの、プラスチックープラスチック、プラスチックー金属などの軽潤滑に優れるため、これらの潤滑、キシミ音防止、スイッチなどの電気接点の潤滑・防錆に使用します。
石けん系シリコーングリース
自動車工業を始め、航空機工業、電気・電子工業といった幅広い分野で使用されています。自動車工業では、ファンクラッチ、ブレーキ、スタータークラッチなど低温から高温という広い温度範囲の潤滑性が要求される用途に使います。電気・電子工業では、洗濯機や冷蔵庫を始めとする家電製品、OA機器、計測機器などの高温または低温における潤滑性が要求される部分に使用します。
非石けん系シリコーングリース
プラスチック同士の潤滑や、潤滑と防水シールを兼ねた箇所に使用されます。例えば、自動車工業では、電動ミラー、ベンチレーター、ルーバーなどの駆動部の潤滑とシールに、電気・電子工業では、プッシュスイッチ、ロータリースイッチなどの金属接点の潤滑や、スライド型ボリュームの摺動部に高級感を付与するために使用します。
シリコーンオイルコンパウンドとは、各種のシリコーンオイルに微粉末シリカ粉を配合した電気絶縁用オイルコンパウンドや、金属酸化物を配合した放熱用オイルコンパウンドがその代表的なもので、シリコーン特有の優れた電気絶縁性と撥水性、耐候性を示し、耐薬品性が良く、物理的、化学的に長期間安定しています。
シリコーンオイルコンパウンドは製品の種類が多く、使用目的によって電気絶縁用、防水防湿シール用、放熱用などがあり、それらの性質も多少異なっています。
シリカ粉増ちょうオイルコンパウンド
(a) 硝子類の絶縁性低下防止: 海岸近くや工業地帯などで、硝子に塩や煙塵が付着すると、その絶縁性能が低下し、せん絡事故を起こすことがあります。その対策としてオイルコンパウンドが使用されます。オイルコンパウンドは、塩や煙塵をコンパウンド層にくるみ込んでしまうアメーバ作用があり、コンパウンド中のシリコーンオイルが表面ににじみ出て絶縁機能低下を防止します。
(b) 電気絶縁・防水・防湿・シール用: 絶縁材料のコネクターや空隙封止用に用い、吸湿や汚染による絶縁性能の低下防止を行います。自動車のプラグや電気機器、ケーブルなどの接続部の防湿シール、ゴム被覆電線のコロナ放電防止、通信機器や電線結合部の防湿・防錆シールなどが主な用途です。
そのほか、銀や銅への防錆効果を付与したオイルコンパウンド、シリコーンゴムを膨潤させないオイルコンパウンドや広い波長領域にわたって高い透明性を示す光学接合用オイルコンパウンドなどがあります。
金属酸化物増ちょうオイルコンパウンド
増ちょう剤として熱伝導性の優れた亜鉛華や酸化アルミニュームなどの金属酸化物を配合したオイルコンパウンドは、耐熱性に優れた放熱用として使用されています。200℃の発熱にも耐えるため、信頼性が要求される自動車電装品や半導体周りの放熱に使われます。
現在、モメンティブで取り扱っているミラブル型シリコーンゴム製品です。
シリコーンゴムは、性状が異なることからミラブル型シリコーンゴムと液状シリコーンゴムに大別できます。
ミラブル型シリコーンゴムは、高重合度(5,000〜10,000 シロキサン単位)の直鎖状ポリオルガノシロキサン(生ゴム)を主原料とし、それにシリカ系の補強性充填剤、種々の特性を付与するための各種添加剤を配合してベースコンパウンドを調製し、次いで過酸化物などの加硫剤を添加して加熱硬化するタイプのゴムです。ベースコンパウンドの可塑化、加硫剤や顔料の配合、シーティングなどがロール作業で行われ、次いで成形加工されることから、ミラブル型と呼びます。
また、加熱硬化を行うため、HCR(Heat Cured Rubber)、HVR(Heat Vulcanizing Rubber)或いはHTV(High Temperature Vulcanizing)などと呼ばれることもあります。
使用にあたっては、我々のようなシリコーンメーカーが供給する加硫剤が配合されていないコンパウンドに、成形加工できる設備を持った加工メーカーにて、加硫剤などを配合し成形加工を行い、シリコーンゴム部品を得るというのが一般的です。
ミラブル型シリコーンゴムの原料、架橋機構、成形加工、特性、応用などにつき、その概略を図1に示します。
シリコーンポリマー(生ゴム)
主原料であるシリコーンポリマー(生ゴム)は、分子量が約40万〜70万で、粘度が1000万 cP を越える粘ちょうな高重合体です。その種類と分子構造を表1に示します。
最も一般的に用いられている生ゴムは、メチルビニル系生ゴムで、系内のビニル基の量を変えることによって、表2に示すように、いろいろな特長をもったシリコーンゴムが得ることができます。
メチルフェニルビニル系生ゴムの場合、フェニル基を5~10モルパーセント導入することによって、シリコーンポリマーの結晶化が妨げられ、-90℃でもゴム状弾性を維持する製品ができます。
メチルフルオロアルキル系生ゴムは、ガソリンなどに対して耐油性を必要とする用途に使用します。ただし、電気特性、耐熱性では一般のシリコーンゴムに比べて若干劣ります(表3参照方)。
ビニル基量 モル% | シリコーンゴムの種類 |
0.05-0.15 | 高伸びゴム (800%以上), 低硬度ゴム |
0.15-0.35 | 一般ゴム, 低圧縮永久ひずみゴム |
0.35-1.0 | 高引裂強度ゴム |
1.0以上 | 自己接着性ゴム,プライマー |
表2 ビニル基量とシリコーンゴム
150°C,h | 175°C,h | 200°C,h | |
フロロシリコーンゴム | 20,000 | 5,000 | 4,000 |
メチルビニルシリコーンゴム | 30,000 | 15,000 | 10,000 |
表3 フロロシリコーンゴムの耐熱寿命
充填剤
表4に一般的にシリコーンゴムに配合される充填剤を示します。シリコーンゴムに欠かせない充填剤が煙霧質シリカと沈殿シリカで、補強性充填剤として使用します。これらのシリカは、非常に粒子径が小さく比表面積が大きいため、生ゴムに均一に配合することが難しいことから、それらを配合する際には、加工助剤の添加やシリカの表面処理などの手段を行います。そして、シリカの表面処理により次に示す特性改善をも可能にします。
1)短時間に均一にシリカを分散
2)シリカと生ゴムの親和性(熟成)時間を短縮
3)電気特性を向上
4)コンパウンドの可塑化戻りを減少
5)コンパウンドの流れ (押出性) を改善
6)耐密封性、耐水蒸気性などの向上
一般的なシリカの表面処理剤としては図3に示すようで、生ゴムへの配合前あらかじめシリカを処理する方法や配合時処理する方法などが取られます。
煙霧質シリカは、沈殿シリカに比べ一時粒子が小さく、補強性に優れ、また不純物が少ないことから、電線用、押出成形用、耐密封用、ノンミリング用、難燃用、透明用などのミラブル型シリコーンゴムに使います。
沈殿シリカは、煙霧質シリカに比べ補強性が若干劣るものの、低コストで且つ反発性に優れたシリコーンゴムが得られることから、パッキングやキーパッドなどに使われるシリコーンゴムに使います。
図4に、煙霧質シリカの表面処理度がシリコーンゴムの特性にどのように影響するかを、表5には、表面処理が耐密封性にどのように影響するかを示します。
カーボンブラックのような導電性を持つ充填剤を生ゴムに配合したのが導電性シリコーンゴムで、その導電性とシリコーンの特徴を利用して、パソコンなどのOA機器キーボードの電気接点部分や電磁波シールド材、帯電防止用部品に使用します。図5に、カーボンブラックの種類および配合量と体積抗率の関係を示します。
加硫剤
シリコーンゴムを硬化(加硫)は、有機過酸化物を利用したラジカル反応によるシロキサン鎖の架橋が一般的です。
有機過酸化物としては、アシル系パーオキサイドとアルキル系パーオキサイドがありますが、有機過酸化物の分解物に対する環境への懸念やシリコーンゴム特性への影響などから、アルキル系を使用します。それぞれの特徴を表7に示します。
表7(この表から“2,4-ジクロロ”と“p-クロロ”を除く。特徴の欄から“HAVが可能”を除く)
白金触媒下、シロキサンポリマー中にあるビニル基とSi-H基の付加反応を利用した硬化方法も一般的に行われ、チューブや電線などのようにシリコーンゴムを連続的に加硫するのに便利な方法です。
特性向上剤
シリコーンゴムに使われるいくつかの特性向上剤を以下に述べます。
加工助剤
シリコーンゴムに配合する加工助剤として、末端にシラノール基やアルコキシ基をもった低分子シリコーンオイルや低分子レジンなどを使用します。これによって、①補強性充填剤の分散が容易になり、②補強性充填剤とポリマーの濡れ速度を増し(熟成期間の短縮)、③クレープ硬化(可塑化戻り)が防止(ノンミリング性)、④流れ性を改良、⑤物性を向上、⑥コンパウンドの可塑度を調節を可能にするなどの効果があります。
耐熱向上剤
シリコーンゴムの耐熱向上剤として、金属酸化物や金属の有機酸塩を用います。表8に各種添加剤と耐熱性との関係を示しまたが、遷移金属系添加剤が非常に効果的であることを示しています。
シリコーンゴムの耐熱性には、シロキサンポリマー重合に用いる触媒やその残渣、ポリマーの末端基によっても耐熱性に差が生じます(図6、図7、表2・6・11参照方)。
難燃性付与剤
シリコーンゴムを難燃性にするには、有機材料の難燃化剤(ハロゲン化合物)を使用する方法とは異なり、微量の白金化合物を添加するだけで難燃性を達成可能にします。これは、白金がシリコーンゴム中のシロキサンポリマーの樹脂化を促すためです。図8に、白金を含むものと含まないものの加熱減量曲線を示します。さらにシロキサンポリマーの樹脂化を加速し難燃性を高めるため、酸化鉄、酸化チタン、カーボンブラック、リン化合物、窒素化合物などの併用が有効です。
シリコーンゴムの成形法
シリコーンゴムの成形法として図9に示すような方法があります。
型成形
通常の有機ゴムと同様に、加圧成形(プレス)、射出成形、トランスファー成形による方成形が適用でき、成形温度や成形時間は加硫剤の種類や製品の大きさに応じて決定します。
型成形後は、加硫剤の分解生成物を除き性質を安定化させるため、200℃で4時間程度の二次加硫をおこない、最終製品とします。O-リング、ガスケット、オイルシール、ダイヤフラム、ブーツなど、シリコーンゴムのほとんど大部分の製品は、この成形法で作ります。
押出成形
電線やチューブなどの連続形状のものは、押出機およびHAV炉あるいはCV炉からなる装置を用いて成形します。押出機にて成形したコンパウンドを、HAVの場合には250~300℃の温度で40~180秒間加熱し、加硫を行います。押出成形においても、製品の性質を安定化させるため、一般的に二次加硫が行われます。
カレンダー成形
シリコーンゴムは、カレンダーロールを用い長尺の薄いシートを製造することができます。ただし, シリコーンゴムコンパウンドはグリーン強度が弱いため、これに対する配慮が必要です。
コーティング成形
コーティング成形は、シリコーンゴムコンパウンドをトルエンやキシレンなどに溶解した液を用いて、ガラスクロス、合成繊維布などの布に浸透塗布またはナイフ塗布を行い、ゴム引き布を作る方法です。
巻きむし成形
シリコーンゴムロールやホース類は、巻きむし法で成形します。これは、心金またはマンドレルに未加硫のシリコーンゴムのシートや布入りテープなどを巻きつけ、スチーム釜などで加硫する方法です。
シリコーンゴムの接着
未加硫のシリコーンゴムを用いて、金属、プラスチック、布などと接着させる場合は、被着体表面を清浄にした後、接着用プライマーを塗布し風乾し、これにシリコーンゴムコンパウンドを圧着し、加硫と同時に接着を完了します。加硫ゴムとの接着には、同種の未加硫ゴムを間に挟むか、液状シリコーンゴムを使用します。加硫シリコーンゴム同士の接着には、接着面に同種の未加硫シリコーンゴムを挟むかその溶液を塗布し、圧着、加熱加硫した後、アト加硫を行います。
また、プライマーを必要としない自己接着性シリコーンゴムも開発されています。
シリコーンゴムの最も重要な特長は、耐熱性が優れていることです。図10に示すように、一般のシリコーンゴムは特殊なシリコーンゴムとして、200℃の加熱でも著しい物性低下を示さず、長時間の使用に耐えることができます。電気用品取締法の絶縁物の上限温度でも、電源電線用を除きシリコーンゴムは無条件で180℃までの使用が認められています。
シリコーンゴムの寿命として、破断時伸びの絶対値が50%低下した状態と定義し、その寿命を推定したグラフを図11に示しますが、シリコーンゴムは高温下で長期間にわたり安定したゴム特性を示します。
しかし、密封条件下の加熱では軟化による劣化(リバージョン)が起こり、耐熱寿命が短くなる場合があります。この軟化現象は、シリコーンゴムの処方、使用する加硫剤の種類、アト加硫条件などを注意深く選択するすることにより、大きく改善するすることがでます。
耐寒性
然ゴムや一般の合成ゴムは、高温では軟化し低温では硬くなり、遂にはぜい化してしまいます。しかし、シリコーンゴムは、一般のもので-50℃、低温用グレードでは-90℃まで柔軟性を保持します(図12、図13参照方)。
機械特性
天然ゴムや一般の合成ゴムにくらべ、シリコーンゴムは常温での機械的特性に劣ります。しかし、常温ではシリコーンゴムより優れた機械的性質を持つ合成ゴムも、高温下で物性が低下し、その優劣が逆転します(表10、図14,図15参照方)。
電気特性
シリコーンゴムの電気特性は、配合する充填剤や添加剤の種類によって大幅に変わるため、電気用グレードはこれらを考慮した処方になっています。表11に代表的な電気用シリコーンゴムの電気特性を示します。図16と図17にはそれぞれ体積抵抗率および誘電特性の温度による変化を示します。また、シリコーンゴムは周波数の変化によっても誘電率、誘電正接の変化が非常に小さい(図18)という特長があります。さらに、シリコーンゴムは高電圧下でのコロナ、アークなどの気中放電に対して非常に耐性が大きいため、高電圧印加部の絶縁体に多用されます(図19、図20)。
シリコーンゴムは特殊配合によって10Ω・cm以下の導電性にすることも可能で、シリコーンの特長である優れた耐熱性、耐候性、柔軟性、低圧縮永久ひずみ性を持った各種接点材料、高圧ケーブルのコロナ防止被覆、自動車用イグニッションケーブルの電波障害防止用導体に使われます。
耐オゾン・耐候性
シリコーンゴムは優れた耐オゾン性を持つため、オゾン濃度が高い環境下での使用にも適しています。オゾン濃度200ppmで有機ゴムと比較試験を行った結果を表12に示します。紫外線、オキシダント、酸性ガスなどを含む大気中での耐候性にも優れます(表13参照方)。
難燃性
有機ゴムにくらべシリコーンゴムは燃えにくいですが、一度着火すると燃え続ける性質があります。この性質を抑え難燃化するため、白金化合物を少量添加することが行われます。
このような方法で難燃化したシリコーンゴムは、有機ハロゲン化化合物などの難燃化剤を含まないため、有毒ガスの発生が少ないという大きな特長を持ちます(表14)。
圧縮永久ひずみ
シリコーンゴムは、-50℃から+250℃という広範囲な温度で使用することができ、圧縮や変形に対して優れた復元性を示します。図21は、各温度における圧縮永久ひずみの値を有機ゴムと比較した一例を示しています。
耐薬品性
シリコーンゴムは、濃厚な強酸や強アルカリには侵されますが、各種の酸、塩基、塩類などの無機薬品、アルコール、動植物油のような極性有機化合物には優れた耐性を持っています。また、ガソリン、トルエンなどの無極性溶剤との接触で膨潤するものの、溶剤が揮散すれば元の状態に戻ります。
図22に溶剤の溶解度パラメーターと各種ゴムの膨潤度(体積増加率)との関係を示します。ここで興味あるのは、ガソリンなどの無極性溶剤に対して優れた耐性を示すフルオロシリコーンゴムが極性溶剤に対して膨潤しやすいということを示しています。
耐放射線性
図24に示すように、シリコーンゴムは他の有機材料に比べ耐放射線性に優れているとは言えませんが、耐熱性や耐火災性などを加味した総合的な特性では、シリコーンゴムが最も優れています。この特性を活かして、原子力のコントロールケーブルにシリコーンゴムを使用します。また、高度な耐放射線性が必要な用途では、メチルフェニルビニルシリコーンゴムを使用します。
ガス透過性
シリコーンゴムのガス透過性は、他の有機ゴムやプラスチック類に比べて極めて大きいという特性があります(表15)。また、優れた選択的ガス透過性を示します(表16)。
熱的性質
シリコーンゴムの熱膨張は、有機ゴムに比べてやや大きく、その線膨張係数は2~3×10-4 /℃の範囲です。また、シリコーンゴムの熱伝導率はおよそ7×10-4 cal/cm・s・℃で、普通の有機ゴムのおよそ2倍です。比熱は0.28~0.35cal/g・℃の範囲で、一般に比重の高いものほど低くなります。
耐飽和水蒸気性
シリコーンゴムは、蒸気圧が5kgf/m²以上の状況下ではシロキサン結合の加水分解が急速に起こり、寿命が短くなります。
シリコーンゴムが主に使用されている分野を見てみましょう。
電線
単独の需要分野として最も量的に多いのは、電線の被覆材料としての用途です。シリコーンゴムは、その耐熱性、耐候性、高電気特性といった特長を生かして、電力用ケーブル、原子力発電所、船舶などのコントロールケーブル、電気機器の内部配線、モーターやテレビなどの口出し線、自動車のイグニッションケーブル、冷蔵庫やショーケースなどの霜取り用ヒーター線など、広範囲な分野で使われています。
自動車工業
トランスミッションのオイルシールを始め、各種ホース、パッキン類、プラグブーツ、コネクター、イグニッションケーブルなど、自動車に使用するゴムの量は非常に多いです。
電気機器
発電機やトランスなどの大型機器から、家庭用電気機器に至るまで、シリコーンゴムは非常に広範囲に使用されています。その具体的な例は表17に示されています。
食品・医療用品
魔法瓶の栓や哺乳瓶のニップルなどは、シリコーンゴムの特性である無味、無臭、無毒性を生かした好例です。食品に関する分野では、自動販売機のチューブや圧力釜、コーヒーメーカーなどのパッキン類に使用されています。
また、医療用としては、人工心肺のホローファイバー、各種カテーテル、超音波診断用レンズ、薬栓などに使用されます。
参考文献
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現在、モメンティブで取り扱っている液状シリコーンゴム製品です。
液状シリコーンゴムは、使用に際して大型の加工機械をほとんど必要とせず、大気中にさらしたり、若干加熱したりすることにより容易に硬化し、シリコーンゴムとなる製品です。
その開発の歴史は、1950年前半に縮合型2成分が開発され、続いて50年代後半に縮合型1成分の酢酸タイプが続き、60年代前半には付加型2成分形が開発されました。その後、縮合型1成分のオキシム、アルコール、アミノキシタイプ等が続々開発され、液状シリコーンゴムの基本的なもののラインナップが整いました。
70年代には、主に難燃性や導電性の特殊機能の付与や、塗膜、ゲル、フォームなどの性状の多様化や、LSRに代表される加工面の改良などが主になり、さらに最近では紫外線硬化などの新たな架橋システムを使った製品の開発へと発展してきました。
液状シリコーンゴムは、機械的な特性を除きシリコーンに要求される特性を持っており、施工や加工が容易なことから、建築、土木、電気・電子、自動車、事務用機器、航空・宇宙産業などにその応用分野を広げつつあります。また、最近では導電性や超耐熱性の液状シリコーンゴムやゲル状、フォーム状の製品ものも開発され、多様化を極めています。
表1に、液状シリコーンゴムの主要原料を示します。
以下、この2つについてその性質などを述べます。
(1) 縮合型1成分液状シリコーンゴムの硬化機構
縮合型1成分液状シリコーンゴムの最も大きな特徴は接着性で、その硬化は次に示す主成分のシラノール(Si-OH)と架橋剤 Si-X との加水分解縮合反応で進みます。この反応において水分の存在は不可欠であり、また多くの場合、加水分解縮合反応を促進するための触媒を必要とします。
反応は、まず密閉下でポリマー末端が架橋剤で封鎖され(I)、一次的に安定化します。次に(I)が水分にさらされるとXの一部がOHと置換され(II)、さらに縮合反応が起こり架橋(III)します。以降、逐次これらの反応が進行してゴム状弾性体になります。
反応触媒として有機金属塩(スズ化合物が一般的)やアミン類を使うこともあり、また架橋剤としても表2に示すようなシラン化合物を用いる場合があり、それぞれ特徴を持った製品を生み出しています。
(2)縮合型1成分液状シリコーンゴムの性質
縮合型1成分液状シリコーンゴムは弾性接着剤であるという最大の特徴に加えて、次に示す特徴を持ちます。
● シリコーンであるため温度による粘度変化が他の材料に比べて非常に小さいため、夏冬同様に作業ができる。
● グリース状非流動性(ノンサグ型)のものから、半流動性(セミサグ型)、流動性(サグ型)と種々のタイプの製品がある。溶剤に溶かした溶液タイプのものもあります。
● 架橋剤の種類を変えることにより、硬化性や物性などの特徴を変えることができる。
● 硬化の際に発熱や吸熱がないため(図1)、周りの部材に熱ストレスや熱ショックを与えることが少ない。質量減少も少なく(図2)収縮率も小さい。
● 硬化後、温度による物性の変化が少なく、50~+200℃の広い温度範囲でゴム弾性を保持する(図3)。
● 耐候性、耐久性、電気特性などのシリコーンゴムの優れた特性を持つ(表3~5)。これらの表からわかるように、大きな変化は見られず、良好な結果を与えています。また、大部分の材質に対して良好な接着性を示す。プライマーを併用することによりさらに強固な接着性を示し耐久性も向上する(表6)。
● 耐薬品性にも優れる。
表8には機構の違いによる特性をまとめました。酢酸型は硬化が速く良好な接着性を示しますが、酢酸による金属や石材の腐食があります。オキシム型は種々の点でバランスの取れた機構で、国内では工業用、建築用ともに最も一般的な製品です。
アルコール型としては速乾性と遅乾性のものがあり、速乾性のものは工程時間の短い工業用として、遅乾性のものは比較的長い作業時間を要する建築用に適しています。また基材への腐食性が少なく、ポリカーボネートに良好な接着性を持ちます。
アセトン型は速乾性でかつ腐食性がないため、工業用に広く用いられています。アミド型、アミノキシ型は低モジュラスタイプの建築用、土木用のシーリング材やハイウェージョイントシール用として使われています。
これらの縮合型1成分液状シリコーンゴムは空気中の水分と反応して硬化するため、硬化は空気と接している面から起こり、順次内部へ進行します。そのため、その硬化速度はそのゴムの形状や架橋剤の違いに加えて、硬化時の温度、湿度の影響を受けます。特に湿度の影響は大きく、高温多湿下では硬化が速くなります。ただし、あまりにも高温多湿下では物性や硬化性の低下をきたすことがあります。図4に酢酸型、オキシム型、アルコール型(速乾性)の硬化速度の一例を示します。
縮合型1成分液状シリコーンゴムは空気中の水分と反応して硬化することから、深部硬化までには長時間を要し、密閉状態となるような条件下では硬化が進行しないため、その使い方に注意が必要です(図5参照方)。
縮合型1成分液状シリコーンゴムは、広範囲の基材に対して良好な接着性を持ちます。特にガラスやホウロウ、タイルには非常に良く接着し、またプライマーを併用することによりより優れた接着性(および耐久性)を得ることができます(表9)。
(3)縮合型1成分液状シリコーンゴム製品
縮合型1成分液状シリコーンゴムの当社標準製品を表10(工業用)および表11(建築用)に示します。
これらのうち、TSE384-B、TSE3843-WはULの難燃性試験で94V-0に認定された難燃グレードで、TSE3826は耐熱グレードです。トスシール73、トスシール83は防カビ性のシーリング材です。
特殊なものとしては、FIPG用液状シリコーンゴムとトスコートがあります。FIPGとは現場成形ガスケット(Formed-in-Place Gasket)の略で、従来の定形ガスケットの代わりに、液状ゴムをフランジ面に塗布し、その場で硬化させてガスケットとして用いるものです。ティーチング機構を組み込んだ自動吐出装置も開発され、特に自動車工業で実用化されています。
トスコートは、溶液タイプの液状シリコーンゴムで、弾性塗膜材として用いられ、従来の塗料に比べて格段に優れた耐候性、耐久性を生かして、屋根用のみならず、壁面や屋上防水用にも用いられています。
(4) 縮合型1成分液状シリコーンゴムの応用
縮合型1成分液状シリコーンゴムは、その接着性を活かして以下のような用途に使われます。
1)建築用シーリング材(カーテンウォールやガラス周りなど)
2)建築用弾性塗料(防錆、防水、保温など)
3)高速道路のジョイントシール
4)家庭用接着剤(バスタブ周り、ガラス周り、自動車の補修用など)
5)プリント基板などの防湿コーティング
6)リード端末のシール
7)コードソケットのポッティングシール
8)部品の基板への接着
9)水槽のシール
10)自動車用の不定形ガスケット(FIPG)
11)ヒーター部の絶縁シール
12)電装品のポッティング
13)コンベアベルトなどの表面離型処理
(1) 縮合型2成分液状シリコーンゴムの硬化機構
縮合型2成分液状シリコーンゴムは本体と硬化剤の2成分から構成され、使用直前に両者を混合して使用します。その硬化機構は、1成分形と同様にシラノールと加水分解性基含有ケイ素化合物の縮合反応を利用しており、アルコキシシランが架橋剤としてが主に使われます。
アミノキシシロキサンを架橋剤として使用すると、硬化して低モジュラスで高伸長のシリコーンゴムが得られますが、これについては (5) で詳述します。
(2)縮合型2成分液状シリコーンゴムの性質
縮合型2成分液状シリコーンゴムは1成分形とは異なり、一般に接着性がなく良好な離型性を持つことが大きな特徴です。深部硬化性にも優れ、硬化剤の種類や量を変えることにより、硬化速度を調整することもでき(表12、図6参照方)、その特性については後述する付加型液状シリコーンゴムと比較して表13に示しています。
縮合型2成分液状シリコーンゴムを接着させるには一般的にプライマーを使いますが、最近では自己接着性のある製品も開発されています。
(3)縮合型2成分液状シリコーンゴム製品
縮合型2成分液状シリコーンゴムの標準製品を表14に示しています。
(4) 縮合型2成分液状シリコーンゴムの応用
縮合型2成分液状シリコーンゴムは、その性質を生かして次のような用途に用いられます。
1)型取り(美術工芸品、内装材、ボタン、スキンモールド用など)
2)歯科用印象材
3)高圧電気回路ポッティング
4)プリント基板絶縁
5)ディップコーティング
6)工業用ロール(ラミネーターなど)、成形材料
7)PPC複写機用ロール
8)接着シール
以上が主な用途となります。
(5)建築用縮合型2成分液状シリコーンゴム
アミノキシシロキサンを架橋剤とする2成分形液状シリコーンゴムは建築用に開発された製品です。副生するヒドロキシアミンが自己触媒性を持つため縮合触媒が不要で、架橋剤として2官能性のアミノキシシロキサンを併用することでポリマー鎖が延長され、1,500%前後の伸びを持つ超低モジュラスのゴムになります。
図7~9に、その代表的な製品であるトスシール361の特性を示しましたが、トスシール361は他の有機系シーリング材と比べて特性や粘度の温度依存性が少なく、繰り返し疲労に対しても耐久性に優れています。
表15に当社の持つアミノキシ型シーリング材を示します。この中には、溶剤に溶かし、弾性体の塗膜を形成するトスコートへの応用も併記されています。新しい壁材としての用途も定着しています。
建築用縮合型2成分液状シリコーンゴムの用途として重要なのがSSG(Structural Sealant Glazing)構法で、それには高めのモジュラスを持つトスシール62やアルコール型で自己接着性のあるTGS701などが使用されます。
付加型液状シリコーンゴムの硬化機構
付加型液状シリコーンゴムは、白金化合物触媒下、ビニル基を含有するポリシロキサンとSi-H結合を持つポリシロキサンとの付加反応により硬化するシリコーンゴムです。
上式に示すよう、硬化反応は副生物の生成なく表面および内部とも均質に進行し、温度を上げることにより短時間で硬化します(図12)。また、白金触媒の種類や量と反応抑制剤(遅延剤)の使用で硬化速度を自由に変えることができ、これらの技術を利用して室温硬化可能な製品や加熱硬化する製品、さらには1成分形や2成分形の製品が開発されています。
硬化時の注意点としては、白金触媒がアミン、有機リン化合物、イオウ化合物、有機スズ化合物などと触れると触媒活性を失うため、これら硬化阻害物質と接触しないような注意を払うことが必要です。
付加型液状シリコーンゴムの種類
表17に用途別の特性や特徴についてまとめました。
付加型液状シリコーンゴムの性質
付加型液状シリコーンゴムは硬化時に副生物を生成しないため、それを使った成形物は寸法安定性に優れ、縮合型のものと比べて小さな線収縮率をしまします。また、電気絶縁性に関しても、硬化初期から良好な電気絶縁性を示します(図13)。さらに、高温下での耐密封性(耐リバージョン性)も優れ(表18)、プライマーを使用によりプラスチックスや金属などへの接着も可能です。
(1) ポッティング
電子部品の絶縁・保護・緩衝用に用いられ、注型して加熱硬化させる低粘度タイプの製品からなり、特に柔軟性を要求される用途にはゲル状に硬化する製品が用いられます。接着性や透明性、難燃性を付与した製品もあります(表19)。
ゲル状に硬化するシリコーンゲルは様々な用途での需要があり、数多くの製品が開発されています。これらのシリコーンゲルの特長と用途を表20に示します。
(2) コーティングおよび接着シール用
この用途には、あらかじめ接着付与剤が添加された自己接着タイプの付加型液状シリコーンゴムが使われ、コーティング用には流動性から半流動性、また接着シール用には主に半流動性から非流動性(チキソトロピー性)のものが用いられます。
接着性の発現は加熱により起こり、加熱温度が高いほど、また加熱時間が長いほど良好な接着を示します。その関係をTSE322を例として表21に示します。また、表22に示すように種々の材質に対して良好な接着を示します。
縮合型1成分室温硬化液状シリコーンゴムと比べて、深部硬化性に優れる、金属に対する腐食がない、硬化の際に副生物がないなどの優れた特徴を持っており、その代表的な製品を表23に示します。
ジャンクションコーティング用
半導体の接合部保護のために使用されるコーティング材として付加型自己接着タイプのシリコーンゴム、中でもゲル状に硬化する製品が使われます。ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属イオンや塩素イオン濃度を厳しく管理する必要があることから、それらを管理したTSJシリーズを製品化しています(表24)。
型取り用
型取り用シリコーンゴムには、流動性、脱泡性、離型性が要求され、複雑な型の場合は特に機械的な強度も要求されます。プロトタイプ型の成形に用いる高強度タイプや長尺物で複雑なパーティングラインの型取りに必要な透明タイプなどがあります(表26)。
LIM用
ミラブル型シリコーンゴムで作っていた成形品を液状ゴムの射出成形(LIM、Liquid Injection Molding)で作るために開発された加熱硬化型液状シリコーンゴムがLSRと呼ばれるもので、ミラブル型シリコーンゴムに匹敵するゴム物性を示します(第4編4章参照方)。代表的な製品を表27に示します。
UV硬化型液状シリコーンゴムの種類
代表的な紫外線(Ultraviolet Rays: UV)硬化型液状シリコーンゴムの硬化機構を以下に説明します。
a) 開始剤を紫外線分解させ発生したラジカルを利用:
b) 紫外線で分解または活性化した開始剤を触媒としたヒドロシリル化反応を利用:
c) ラジカル開始剤によるアクリル基を持ったシリコーンの重合反応を利用:
d) UVでオニウム塩を分解して強酸を発生させ、これでエポキシ基を開環させて架橋させる方法:
e) ビニルシロキサンへのチオールの付加反応で架橋する方法:
当社のUV硬化型液状シリコーンゴムはこれらの硬化機構を用いて製品化しており、UV硬化の最大の特徴はその硬化時間が非常に速いことです。例えば、硬化機構としてラジカルタイプのTUV6020は80W/cmの高圧水銀灯で10cmの照射距離のとき、約10秒で硬化します。ただし、欠点として硬化厚みに制限があり、また外観も透明もしくは半透明のものに限られます。
硬化機構c,d,eに示す有機反応型のものは、低エネルギーのUVで硬化するものの、得られた硬化物の耐久性が通常のシリコーンゴムに比べて劣るため、あまり耐久性を必要としない剝離紙コーティング剤や繊維処理剤、平版印刷、フォトレジストなどに適しています。
当社の標準的なUV硬化型液状シリコーンゴムを表28に示します。
液状シリコーンゴムにカーボン系、銀系、ニッケル系、金属酸化物系の導電性充填剤を配合した製品で、用途に応じて1成分形、2成分形、さらに縮合型、付加型など各種のタイプの製品があります。それらは10−3∼10Ω⋅cmの範囲の体積抵抗率を持ち、電気・電子用の帯電防止部品や導電部の接着やシール、およびクリーンルームの帯電防止用シールなどに使われます。