シリコーン徹底解説

シリコーンQ&A

シリコーンQ&A

製品の特性や用途、技術動向について詳しく解説します。シリコーンに関する疑問や興味をお持ちの方々に向けて、わかりやすく、そして実用的な情報をお届けします。

 

Q&A シリコーンの歴史

A 1941年に東芝(沿革参照)がグリニヤール反応によるエチルクロロシランの合成実験を開始し、シリコーンをケイ素樹脂と名づけて研究を始めました。しかし、戦局の悪化による資材の確保難から研究は一時中断されました。なお、戦時中に撃墜されたアメリカの重爆撃機B29を調査するとすでにケイ素樹脂が使用されていたと言われています。

 

戦後多くの研究機関がシリコーンの研究を始めました。文部省の補助金を得てケイ素樹脂委員会が結成され、工業化の研究を促進しました。 

 1951年、東芝(沿革参照)はメチルシリコーンワニスで絶縁処理した乾式トランスのブリヂストンビルへの納入や電球のベース接着剤への添加などの応用を開始しました。しかし日本でのシリコーン製品の本格的販売はGE社(沿革参照)の特許実施権が許諾された1953年で、 その当時の営業品目はオイル、ゴム、繊維および建築用撥水剤、 離型剤 消泡剤 つやだし剤などでした。 その後、 製品開発が進シリコーンは化粧品から宇宙開発まで様々な用途に使用されています。 

Q&A シリコーンとエマルジョン

エマルジョンは、乳濁液ともいわれ液中に混じりあわない他の液体が微細粒子となって、分散、浮遊している混合物をいいます。粒径が0.1~10μm 程度の乳濁液では、可視光を乱反射しているため、牛乳のように白く濁っています。しかし0.1μm以下の粒径を持つ乳濁液(一般的にはマイクロエマルジョンと呼ばれる)では可視光の乱反射がなくなり、透明あるいは半透明に見えます。

水と油の混合物を激しく撹拌すると一時的に分散できますが、すぐに再び分離します。これに、微量の乳化剤を加えることにより、安定な混合物ができます。エマルジョンには、水の中に油を分散したO/W型 油の中に水を分散したWO型があります。O/W型の例としては牛乳など、WO型としてはマーガリンなどがあります。 

乳化剤とはエマルジョンを作るための添加剤のことをいい、その多くは界面活性剤を使用します。界面活性剤とは、分子の形で見ると、親水基、疎水基の性質の異なる2つの部分を持つ化学物質をいいます。この親水基 疎水基を変えることにより、水に溶けやすいもの、水に溶けにくいものなどをつくることができます。(下図参照)

 

模式図を下記に示します。油脂分が界面活性剤に囲まれ、水の中に浮いている状態のエマルジョンです。

 

まず一つ目の理由は、地球環境問題から有機溶剤の削減が挙げられます。エマルジョンタイプは水系であるため、有機溶剤を大幅に削減できます。

二つ目の理由として、シリコーンを分散させる際にエマルジョンを使用すると分散が容易になることが挙げられます。この技術は化粧料などに応用されています。

シリコーンエマルジョンは、化粧料用、繊維加工用、離型剤用、剥離紙用、消泡用、食品添加用など、非常に幅広い分野にわたっています。今後もユーザーのニーズに応えられるよう、製品開発を行って参ります。

Q&A シリコーンレジン

シリコーンレジンは、シリコーンオイルやシリコーンゴムが主に2官能性単位で構成されているのに対し、3官能性あるいは4官能性の単位を分子中に多く取り入れています。したがって、三次元の網目構造を作り、硬化後は硬い皮膜になります。なお、官能性とは高分子化合物を生成する際の結合手の数のことです。

過去の文献などではシリコーンレジンのことをシリコーンワニスと呼んでいる場合があります。現在ではシリコーンレジンとの呼び方が一般的です。

シリコーン粘着剤は、通常PSA(Pressure Sensitive Adhesive)と呼ばれ、2官能性のシリコーン生ゴムとシリコーンレジン(MQレジン)を組み合わせたものです。水酸基(-OH)などの極性基が多く含まれているシリコーンレジンを使用しているため、強い粘着力を発揮します。

使用に際しては、過酸化物や付加反応により、シリコーン生ゴムの粘着力の耐熱性が大幅に向上します。PSAは通常の粘着剤で接着することが難しいフッ素樹脂にも強い粘着力があります。これはシリコーン特有の濡れ性の良さにも関係しています。

耐熱性、耐寒性、電気絶縁性などシリコーンの長所を生かした用途のほかに、最近では医療用粘着テープにも利用されています。粘着力に加えてPSAは耐水性に優れ、気体の透過性も良いので蒸れない点も好都合です。

いろいろありますが、 よく耳にする用語について解説してみます。

 

酸価

シリコーンレジンの性質を示すものとして、酸性度の程度があります。シリコーンレジンを塗料に調合する際には顔料などが配合されますが、酸価が大きいと塗料としての保存安定性が悪くなります。そのため、酸価は小さい方が好ましいです。

塗膜にした場合、硬くて柔軟性に富み、下地によく付着している強靭な塗膜が理想的です。そのような基本的特性を評価するための試験項目として、以下のものがよく使われます。

 

屈曲性

塗膜の柔軟性を評価する方法です。鉄、ステンレス、アルミニウムなどの板に10~100μmの塗膜を調製し、その試験板を折り曲げて、その部分のヒビ割れ抵抗性を確認します。

試験片を指定の温度に一定時間さらし、室温に戻した後、屈曲性を評価することで耐熱性を把握できます。例えば、「3mm 250℃ 300時間でOK」と記載されていれば、250℃に300時間さらし、折り曲げ直径3mmで試験片を折り曲げても塗膜に割れが発生していないことを意味します。

 

衝撃試験

衝撃によって生じる曲げに対する塗膜の粘り強さを評価する方法です。デュポン式衝撃試験を例にとって説明します。突端に一定の丸みを持つ撃ち型と、その直径と合致した窪みを持つ受け台の間に試料を置きます。おもりを所定の高さから落下させて塗膜に衝撃を与え、塗膜のキズや剥離を確認します。

例えば、「500g、1/2インチで30cm」と表示されていれば、500gのおもりを1/2インチの丸みの撃ち型に30cmの高さから落とすことを意味します。異常が発生するまでの落下距離が大きいほど、優れた耐衝撃性があることになります。

 

エリクセン試験

塗膜の伸び特性を評価する方法です。試験片を綱球で押し出す方法を用います。押し込み深さ(mm)が大きいほど、伸び特性が良いことになります。

 

蓄針試験

碁盤目テープ法とも呼ばれる方法です。1mm間隔で塗膜を貫通して素地にする縦横各11本の切り傷を碁盤目状につけ、その碁盤目にセロハンテープを貼り、それを剥がした後の塗膜の基板への付着状態を調べます。結果は「100/100」や「80/100」などと表記され、数値が大きいほど優れた付着性を示します。

このほかに、塗膜の硬さや艶を測定する鉛筆ひっかき試験や鏡面光沢試験などがあります。

シリコーンを塗料として応用する際に忘れてならないのが耐候性試験です。塗料塗膜に限らず、屋外で使用される部材の耐久性を評価する重要な項目です。

試験体をそのまま屋外にさらす屋外暴露試験では、結果が判明するまでに非常に長い期間が必要となる場合が多いです。そのため、耐久性の結果を早く知るための評価法として、耐候促進試験が重要となります。人工的に厳しい気候条件を作り出すことで、屋外暴露試験の20~50倍の速さに相当します。

皮膜の粘着性を評価する試験方法です。簡単に言えば、PSAを塗布した試験片を傾斜させ、様々な大きさの金属ボール(31種類)をその上に転がします。傾斜面に止まるボールのうち、一番大きなボールの番号で粘着力を示します。番号が大きいほど、粘着力が高いことを意味します。

Q&A 電気的性質について

絶縁材料に交流電圧がかけられたときに単位体積中に蓄えられる静電エネルギーの大きさを、空気(または真空)の値を基準としてその比で表わした値です。エチルアルコールは 25、木材は 2.5~7.7、陶器は 5.7~6.8、ダイヤモンドは 16.5です。

充填剤などを加えないシリコーンゴムやシリコーンオイルの誘電率は約2.7です。絶縁材料としては、値の小さいものが望まれます。

絶縁体に交流電界をかけると、分子は電界にあわせて形を変化させようとしますが、電界に対して追随が遅れます。その遅れの程度が誘電正接です。その値が大きい程、絶縁体に交流電界をかけた時のエネルギーロスが大きくなりますので、絶縁材料としては値の小さいものが望まれます。

絶縁体に電圧をかけていくと、電圧がある値に達すると耐えきれなくなり電気的な破壊をおこします。この値を絶縁破壊電圧といい、1mm厚の絶縁体に対する強さで表します。絶縁破壊電圧は一般に直流より交流電圧の方が低くなります。また、絶縁体の厚さとは比例せず、厚みの効果は減少するので、設計上注意を要します。絶縁材料としては、絶縁破壊の強さが高いものが望まれます。

絶縁材料に直流電圧をかけると、電圧に比例した電流が流れますが、電流の流れにくさを示すのが体積抵抗率です。絶縁材料としては、体積抵抗率が高いものが望まれます。

絶縁材料としては電気特性以外に多くの特性が要求されますが、特に下記の特性が重要です。

  1. ・熱的性質: 耐寒性、耐熱性など
  2. ・機械的性質: 引張強さ、伸びなど
  3. ・化学的性質: 耐酸性、耐アルカリ性、耐水性など

また、使いやすさ、生産性、安全衛生面や廃棄の際の毒性面なども考慮してください。

シリコーンは機械的性質、化学的性質、電気特性に優れていますが、特に幅広い温度領域にわたって特性を維持するということがポイントです。

材料の難燃性グレードを示すもので、米国のアンダーライターズ・ラボラトリー(略称UL)で承認されたレベルです。

  • UL94V-0: 試料を垂直にして燃やしたときの一番厳しい要求値です。
  • UL94V-1: 次に厳しいグレードです。
  • 94HB: 水平における燃焼速度を測定するもので、この3つの中では一番ゆるやかなグレードです。

なお、弊社の難燃性シリコーンゴムにはハロゲン系難燃剤が配合されておりません。したがって燃焼時にも有毒ガスの発生がありません。

Q&A 建築用シーリング材について

建築の外壁はガラス、サッシ、パネル(金属やコンクリート)などで構成されており、それらの部材のあいだには必ずすき間(目地)があります。このすき間(目地)からの水の浸入や外気の流入を防ぐのが目的です。

大別すると、定形シーリング材と不定形シーリング材に分かれます。

  • ・定形シーリング材: 合成ゴム(シリコーンゴム、クロロプレンゴム、エチレンプロピレンゴムなど)を押出成形などであらかじめひも状などに成形し、目地(部材のすき間)にはめ込むガスケットのことをいいます。
  • ・不定形シーリング材: ペースト状の材料で施工時に目地に充填後、硬化してゴム状になるものをいいます。

一般的にはシーリング材と言えば、不定形シーリング材を意味することが多いようです。

次のような性能が主に要求されます。

 

  1. ①四季を通じて良好な作業性があり、確実に施工できること
  2. ②建築部材(ガラス、アルミニウム、コンクリートなど)に良く接着すること
  3. ➂目地は太陽光、地震、風などによって変形が生じますが、目地が変形しても破断が生じないこと

硬化機構別に分類すると次のようになります。

各々のシーリング材には一長一短があり、一つのシーリング材ですべての用途に適応することはできません。適材適所がシーリング材の使い方の原則です。例えば、シリコーンシーリング材は紫外線に強いのでガラスの目地には適していますが、石の目地では目地周辺を汚すため適さないということになります。

耐候性(耐紫外線性、耐オゾン性)、耐水性、耐熱・耐寒性や作業性が優れていることです。また、防カビ性や難燃性、透明性、流動性、導電性などの特殊な機能を付与した多彩な製品が用意されていることも長所の一つといえるでしょう。

短所としては、シーリング材の表面に塗料がのらない、石やタイルを汚染することなどです。

一口にシリコーンシーリング材といっても、その硬化機構により、酢酸タイプ、オキシムタイプ、アルコールタイプ、アミノキシタイプなどいろいろな種類があります。これらシーリング材は硬化メカニズム、接着性の違い、また、硬化後のゴム物性の違いなどにより、その用途が異なってきます。

「CF」「TCF」「AF」の記号の意味を下記に示します。

  • ・CF (Cohesive Failure の略): 凝集破壊でシーリング材自身が破壊すること
  • ・TCF (Thin Layer Cohesive Failure の略): 薄層破壊でシーリング材が被着体表面に薄い層を残して凝集破壊すること
  • ・AF (Adhesive Failure の略): 接着破壊でシーリング材が被着面から剥離すること

JIS A 5758に規定されており、2成分形シーリング材の混練作業および充填作業ができるまでの時間を表します。テスト方法は、試料をカートリッジに入れ、カートリッジ内の試料のほぼ全量を押し出すのに要する時間を測定します。押し出し時間が20秒になるまでの経過時間を可使時間といいます(押し出し圧力は1.0kgf/cm²)。これは、試料が置かれている温度によって異なり、一般に温度が高くなるにつれて短くなります。弊社トスシール361の場合の例を示してみます。

Q&A ミラブル型シリコーンゴム

 ロール(ロールミル)を用いて成形加工するシリコーンゴムのことです。天然ゴムや一般の合成ゴムと同じように、ロール作業で可塑化、加硫剤配合、シート分出し、色づけなどを行い成形加工します。なお、ミラブル型シリコーンゴムはHCR(熱加硫シリコーンゴム、Heat Cured Rubber)、HVR(Heat Vulcanizing Rubber)などとも呼ばれています。

 汎用品、高引裂き成形品、耐熱成形品、難然成形品、押出し成形品、導電部品、電磁波シールド、熱伝導部品などに適したグレードが用意されています詳しくは弊社ミラブル型シリコーンゴム(HCR)製品群を、ご参照ください。

 まずあげられる点は耐熱性です。一般的には連続使用温度が200℃前後といわれています。機械的強度が低いとされているシリコーンゴムですが、温度による強度の変化が小さいので、高温下ではフッ素ゴムをしのぎます。また、ぜい化温度もマイナス60℃以下であり、高温から低温まで幅広い温度範囲にわたって安定したゴム特性を維持します。
   このほかにも、意匠性に優れること、硫黄加硫でないため異臭の少ないゴム成形品が得られるなどの特長もあります。

 原料は、生ゴム、充填剤、加硫剤、特性向上剤などです。

 生ゴムは、分子量が約40万~70万の無色・透明なシリコーンポリマーです。

 合成シリカ、けいそう土、石英、炭酸カルシウムなどの細かい粉が用いられます。特に、合成シリカ系充填剤は補強効果が顕著です。生ゴムだけを加硫すると、引張強さは3~5MPaにしかならず弱くて使えません。充填剤を配合することにより、約10~40倍もの補強効果が得られます。

 有機過酸化物(パーオキサイド)と白金化合物が主なものです。プレス成形にはアルキル系有機過酸化物、押出し成形にはアシル系有機過酸化物、さらにカーボン配合導電性シリコーンゴムの押出し成形には白金化合物が使用されます。

 一般的に、シリコーンゴムコンパウンドには生ゴム、充填剤、特性向上剤などが配合されており、加硫剤は別に梱包されていまず。品番の後にUと表示している製品、例えば、製品TSE221~6UのUとは、加硫剤を配合しないタイプであるということを示しています。

 一次加硫によって成形され、ゴム物性もほぼ得られるわけてすが、高温使用時での物性の安定化、あるいは成形品に残存している加硫剤の分解生成物や低分子量シリコーン成分の除去などを目的としたものです。
二次加硫は、一般的には200℃で4時間程度が標準です。

 

Q&A 液状シリコーンゴムのカタログ単位について

本体と硬化剤を混合後、粘度が比較的ゆるやかな範囲、言い換えれば、流動性を保持している時間をいいます。

厳密には各製品群ごとにポットライフの規定が異なっています。流動性を保持している時間をいうこともあれば、混合直後から粘度が2倍に達する時間まで、あるいは一定の粘度に達するまでを規定している場合などがあります。

タックフリータイムとは、指触乾燥時間とも呼ばれます。主として、1成分形の室温硬化性液状シリコーンゴムの硬化性の尺度として用いられ、硬化が進行して、指先で軽く触れて試料が指先に付着しなくなるまでに要した時間をいいます。

一般にはJIS A型と呼ばれる日本工業規格の試験法で測定した「スプリング硬さ」で示します。

JAS A スプリング硬さ試験機の構造を図1に示します。

試験片表面に加圧面を接触させたとき、加圧面の中心から、ばね力により突き出している押針が、ゴム面によって押し戻される距離を硬さとして目盛りに示すような構造になっています。

例えば、机の上にある消しゴムは約45、ゴルフボールは100、それから、外に止まっている車のタイヤは約60・・・。硬いほど数字が大きくなります。

原理はよく似ていますが、厳密にいうと異なります。両者の示度の差は1~2ポイントです。

JIS Aでは、硬さ10以下の柔らかいゴムを測定するのは難しいため、押針の代わりに球を用いる特殊な試験機を使用します。

針入度計を用いて測定します。針入度とは、下図のような針をゲルの上に一定時間落として、その針の進んだ距離を測定します。柔らかい程数字が大きくなります。

針入度測定用コーン 針入度測定用コーン

例えば、台所の冷蔵庫に入っているものを測定しましょう。こんにゃくは約40、木綿豆腐は約50、絹ごし豆腐は約80、プリンは約100などです。

(注意)今回測定した豆腐、プリン、消しゴムなどは、種類により硬さ、柔らかさが異なります。

Q&A カタログの単位について(シリコーンオイル)

自由な変形と流動性が液体の大きな特徴です。しかし、液体といっても水のようにサラッとした流れやすいものから、水飴のようにドロッとした流れにくいものまであります。この粘りの大小を表すものが粘度です。

粘度は、外からの力(せん断力)に対して垂直方向に働く単位面積当りの液体の内部抵抗の大きさ(ずり応力)と定義され、単位としてはセンチボアズ(cP){SI単位ではmPa・s}が使用されます。一方、動粘度は、液体が重力方向に細管の中を流れ落ちるときの速さで、液体の粘りを定義します。単位としてはセンチストークス(cSt)(SI単位ではmm²/s)が使用されます。

動粘度は精密に作られたガラス製の動粘度計により測定します。一定の体積の液体が流下するのに必要な時間から求められます。粘度の方は、回転粘度計などを用いて測定します。自動測定ができるものもあり、比較的簡便にできるのが特徴です。

 

動粘度は粘度を比重で割ると求められます。

 

シリコーンオイルの温度による粘度変化を示し、下式により求められます。シリコーンオイルの粘度温度係数は鉱油などに比べて小さい、つまり温度が変化しても粘度変化は小さいことが特徴です。

 

液体が気体と接しているとき、液体はできるだけ表面積を縮小しようとする性質があります。この性質を単位当たりの表面を縮める力として表したとき、この力を表面張力と呼びます。

ウィルヘルミーの表面張力計は、プレートを引き上げる時に釣り合った力から求めます(下図参照)。

 

シリコーンオイルの表面張力は約16~22 dyn/cmと鉱油と比べて低いことが特徴です(下表参照)。表面張力が低いと、表面への広がり性や浸透性が大きくなります。この性質を応用して、シリコーンオイルは消泡剤、つや出し剤、塗料添加剤などとして用いられています。

 

Q&A 撥水性と透湿性

A 一見、水と水蒸気は同じに見えますが、実は異なるのです。同じ化学組成を持っていても、水と水蒸気の物理的性質はまったく異なります。その秘密がここにあるのです。

 まず、水にはその中心に集まろうとする力、つまり凝集力があります。この力は表面積をできるだけ小さくしようとするため、表面張力と呼ばれます。このため、水を無重力空間に浮かべると、その形は真球状になります。水に限らず、液体はみなこのようですが、水では特にその力が大きいのです。一方、地上で水滴を物体表面に載せた場合には、重力の他に、物体表面が水を引き寄せようとする力、つまり付着力の影響を受けることになります。 

 物体の表面は、その分子が持つ力によって、近接する水の分子を引き寄せようとします。その度合いは、その表面の物理的・化学的構造によって異なります。しかし、この力が十分に大きくて、水の凝集力に打ち勝ったとき、水は広がって表面が濡れます。逆に、物体表面の引力が弱いと、水は凝集力で丸まって水滴になり、いわば水が撥かれた状態になります。図中の接触角は濡れにくさの度合いを示すもので、90°を超えると強い撥水性があることになります。シリコーン膜は、もともと引力の小さいメチル基が表面に並んでいるので撥水性を示します。ジメチルシリコーンオイルで処理したガラス板の、水に対する接触角は約103°です。(下図参照)

 

 水蒸気の場合、水滴とは逆に周囲へ広がろうとします。この拡散力こそが、透湿性の原動力となるのです。

 

A 水蒸気に限らず、気体が皮膜を通りやすいかどうか(気体透過係数)は、皮膜中への気体の侵入しやすさ(溶解度係数)と皮膜中での気体分子の拡散しやすさ(拡散係数)の積によって決まります。皮膜中では、自由空間に比べると気体の動きは制限されますが、その程度は皮膜を構成している物質によって異なります。シリコーン皮膜中では、他の合成ゴムやプラスチックの皮膜に比べて、気体の拡散係数が桁違いに大きいのです。大まかに言えば、隙間の多い分子構造をしていると言えるかもしれません。特に水蒸気の場合は、溶解度係数も大きいので、結果として極めて高い透湿性を示すのです。

A 例えば、弾性コーティング材トスコートは、建築物の外壁への水の浸入を防ぐのが役目です。しかし、壁内部にある水分は閉じ込められず、水蒸気として放出されます。そのため、塗膜のふくれの原因にはなりません。また、絆創膏の粘着剤に応用すれば、防水に加えて、皮膚が汗でむれるのを防ぐ効果が期待できます。

A 他の気体の透過係数も大きく、また気体の種類によりその程度に差があります。シリコーン膜の酸素と窒素の透過係数の差を利用して、空気中の酸素比率を高めること、つまり酸素富化が実際に行われています。例えば、酸素吸入器や高効率燃焼炉のための酸素富化装置などがそれです。

A 油は、水に比べて表面張力(凝集力)が約1/3と小さいため、通常のシリコーンの表面では付着力の方が勝ってしまい、油は広がってしまいます。つまり、通常のシリコーンの撥油性は十分ではありません。しかし、水素をフッ素で置換したシリコーンでは、その付着力が極めて小さくなっています。

A "なんでも"と一概に言うのは過言かもしれませんが、確かにシリコーンは製品設計の自由度が大きく、シリコーン本来の性質を上手に引き出して活用する目的で、無数とも言える製品が開発され、市販されています。撥水性の源である、他の物質に対する付着力が小さいという性質を利用した製品に限ってみても、多種類の用途に向けた離型シリコーンや、剥離紙用シリコーン、普通紙複写機の加熱定着ロール用シリコーンゴムなど、数多くの製品を挙げることができます。

Q&A 消泡と整泡

 泡について

 

本題に入る前に泡について少し考えてみましょう。一般に泡とは液体と気体(多くの場合空気)とから成り立っています。泡立ちの現象は“泡立ちやすさ”と“泡の消えにくさ”という2つの囚子に分けて考えることができます。“泡立ちやすさ”とは泡を形成する液体中に起泡性の第3物質が存在することにより促進され、泡立ちの原因となるのです。これに対して“泡の消えにくさ”とは、発生した泡の界面の粘性や剛性の大きさに左右され、これらが大きいほど消えにくくなります。

 

ここでいう起泡性の物質とは泡を形成する液体に均一に溶解して、液体と気体の液膜に吸着し、表面張力を低下させる働きをするものです。分子中に親水性部分と疎水性部分を持つことが構造上の特徴で、その代表的なものが石けんや中性洗剤などです。

したがって、“泡立ちやすさ”と“泡の消えにくさ”を助長するものが整泡剤に、それら(特に“泡の消えにくさ”)を減ずるものが消泡剤として有効なわけです。

では、なぜシリコーンはこの相反する2つの性質を持っているのかを以下に説明してみます。

 

 

シリコーンの消泡性

シリコーン(特にジメチルシリコーンオイル)は表面張力が小さいので、泡立っている液に対して均一に拡がり、個々の泡の表面に接しやすいと言えます。また、シリコーンはいろいろな液体に対しての溶解性(親和性)が小さいことから、シリコーンが触れた泡の表面は、その部分だけ局部的に表面張力が低下します。この部分がシリコーンの触れていない表面張力の大きい部分に強く引っ張られるので、結果として泡が破れることになるのです。その際、泡を形成している液体にシリコーンが溶解しないことが重要な点です。溶解してしまっては、液体の表面張を均一に広げることになり、かえって泡立ちを促進することになりかねません。ですから消泡削として必要な条件は

 

 

 

1.    泡を形成している液体への溶解性が小さいこと。ただし、泡表面へ近づくだけの親和性はあること。

 

2.    表面張力が小さいこと。

 

3.    泡表面への分散性がよいこと。

 

 

 

などがポイントです。ジメチルシリコーンオイルの消泡効果が優れているのは、1)、2)の持性が他の消泡剤にくらべまさっているからにほかなりません。また、ジメチルシリコーンオイルにシリカ粉を配合したオイルコンパウンド型が消泡剤として一層適しているのは、3)の分散性が一段と向上しているからです。

 

 

 

シリコーンの整泡性

先に、石けんのような起泡性の物質は、一つの分子中に親水性部分と疎水件部分をもつことが特徴だと述べました。ウレタンフォーム発泡時などに用いられるシリコーン整泡剤は、起泡性物質のシリコーン版ともいえるのです。シリコーン整泡剤は、シリコーン部分(ジメチルシリコーンオイルの骨格と同じポリジメチルシロキサン鎖)を疎水性部分とし、中性洗剤の親水基と同じポリエチレングリコールなどを親水件部分とした界面活性剤としての構造を有しているわけです。

 

ウレタンフォーム発泡時に整泡剤がどのような役割をはたすかをまとめると次のようになります。

 

 

 

1)相溶性のないウレタン原料の各成分を均一に分散させること。

 

2)発泡系の表面張力を上げることによって、泡を発生させやすくすること。

 

3)できた泡を均一にし、安定化させること。

 

 

 

まさに石けんと同じ役割をはたしていることがわかると思います。ですから、消泡剤として用いられるシリコーンと整泡剤として用いられるシリコーンとは、同じシリコーンの仲間でも化学構造的にはかなり異なっているのです。そこに、消泡と整泡に使い分けられる秘密が隠されているのです。

以上消泡性と整泡性について簡単に説明しましたが、この相反する性質を発揮させるためには、それぞれに適切なシリコーンを使用することが肝要なのです。

Q&A UL規格とシリコー ン

 ULは、Underwriteres Laboratories Inc.,の略称です。アメリカ合衆国において最も隆威のある民間の安全試験機関で、世界を代表する機関とも言えます。