いろいろな工業において泡立ち(発泡)のために作業能率や収率が低下したり、品質が低下するケースは多く、そのため泡立ちを減らす、あるいは泡を消すことが必要不可欠です。その目的で使われるのが消泡シリコーンです。
一般に、泡とは液体または固体が気体を包みこんでいる状態のものを言い、その泡を消すための方法として、次のような方法が知られています。
1)物理的・機械的方法 温度、圧力を変化させる、攪拌、遠心力、超音波などの機械的な外力を加えるなどの方法。
2)化学的方法 ろ過、吸着、沈澱などにより起泡性物質を除去する、希釈により起泡性物質の濃度を下げる、起泡性物質を溶解またはこれと反応する物質を添加する、消泡性のある物質を添加するなどの方法。
これらのうち、消泡剤の添加による消泡手段は、作業能率が良く、経済的にも有利で、実用上きわめて有効な方法です。
消泡剤を添加した場合の消泡メカニズムとしては、表面張力が小さい消泡剤が泡膜に入り込み、局部的に泡膜の表面張力を低下させ、その部分が周囲の表面張力の大きい泡膜によって強く引かれて、泡の破壊が起こると考えられています。一方、抑泡メカニズムは、液に不溶でかつ表面張力の小さい抑泡剤が、発泡液表面に点在することにより、系の表面張力が不均一になり泡が形成できないためと考えられています。
一般に、シリコーンオイルは抑泡性(持続性)に優れますが、分散性に乏しいため破泡性(速効性)に乏しいというきらいがあります。この点を補う消泡剤として、エマルジョン型や溶液型の消泡シリコーンがあります。ここで消泡剤として必要な特性をまとめてみると次のようになります。
1)表面張力が小さいです。
2)発泡液への溶解性は小さいが、発泡物質に対してある程度の親和性を有する。
3)分散性に優れる。
またシリコーンが消泡剤として優れている点としては次のようなことが挙げられます。
- 1. 化学的に安定で、発泡物質と反応しない。
- 2. 耐熱性に優れ、不揮発性である。
- 3. 生理活性がなく、一部の製品(ジメチルシリコーン)は食品添加物としても認可されている。また排水処理用としても環境汚染のリスクが少ない。
- 4. 微量の添加で高い消泡効果が期待できる。
消泡シリコーンの種類
消泡シリコーンには、オイル型、溶液型、エマルジョン型、オイルコパウンド型などがあり、発泡液の種類や条件に応じて、その形態を選択することができます。
(1) オイル型消泡剤
100%オイル分であり、耐熱性に優れています。油性系で水や溶剤などの異物混入を嫌う場合に使用されます。発泡液が強酸または強アルカリで高温の場合には、変性シリコーンオイルが使用されます。
(2) 溶液型消泡剤
オイル型と同様、油性系の消泡に用いられるもので、使用の際の作業性および分散性を向上させるため、あらかじめ溶剤で希釈したものです。
(3) エマルジョン型消泡剤
シリコーンオイルを乳化剤を用いて乳化したもので、水系発泡液の消泡剤として用いられます。食品添加用、排水処理用などいろいろな用途に適するエマルジョン型消泡剤があります。
(4) オイルコンパウンド型消泡剤
より少量で消泡効果を発揮させるため、微粉末シリカをフィラーとして配合したものです。オイル型と同様、非水系で多く用いられます。
消泡シリコーンの応用
消泡シリコーンが用いられる分野について次に簡単に紹介します。
(1) 食品工業
食品の製造工程中に発生する泡を消す目的で用いられ、品質や収率の向上に役立ちます。応用例としては① 機械豆腐、包装豆腐の豆汁の煮沸工程、豆乳の充填工程、大豆油の搾油工程、大豆蛋白の製造工程など、②しょう油、発酵乳製品、グルタミン酸ソーダなど発酵工業における製造工程、③ジュース、コーヒーなどの機械による自動充填などが挙げられます。
消泡剤として、食品衛生法の基準に適合した消泡シリコーンの選択が必要で、その添加量も、食品 1kgに対しジメチルシリコーンオイルまたはシリコーン樹脂(食品衛生法に基づくシリコーンオイルとシリカの混合物の呼称)として0.05g以下と規定されています。また、消泡以外の目的で食品に添加してはならないとされています。
(2) 医薬品工業、化粧品工業
生理活性がないので、医薬品や化粧品の消泡に用いられます。
(3) 繊維工業
染色、精練、仕上げなどの工程における発泡防止に用いられるほか、加工用樹脂やラテックスに配合されて使用されます。また、染色工場の排水処理設備でも用いられます。
(4) 石油化学工業
石油精製、ペトロコークス製造工程、潤滑油や作動油などの製造工程、石油精製の脱硫工程での発砲防止に用いられます。また化学工業では、合成樹脂、ラテックスなどの重合、蒸留、洗浄の際の発泡に対して効果があり、装置の効率化、品質向上に役立っています。
(5) インキ塗料工業
塗装時のピンホール、印刷むらなどの原因となる泡に対して有効で、インキ、接着剤、塗料などの製造、配合の際に用いられます。
(6) パルプ製紙工業
パルプ加工工程、廃液工程、製紙工程などにおける発泡の抑制に用いられます。
(7) 排水処理
生活排水や工場排水などの処理施設で発生する泡の消泡に用いられます。シリコーン消泡剤は、微量の添加で良好な消泡性を示すので、BOD、CODの数値に大きく影響しない利点があります。
消泡シリコーン使用の際の注意点
(1) 希釈
消泡シリコーンは、通常微量の添加量(1~100ppm)で優れた消泡効果を示すため、水や溶剤で希釈して使用します。希釈することにより、添加量の調整が容易になり、分散効果も向上します。
(2) 添加量
添加量の決定は、まず有効成分で50ppm程度の消泡剤を加え、その消泡効果をみて増減する方法を勧めます。
(3)消泡シリコーンの選択
酸性、アルカリ性の強い高温発泡液には変性シリコーンオイルを基油とした消泡剤が適するなど、 発泡液の種類により、用いる消泡剤のタイプを選択することが必要です。